研究課題/領域番号 |
23659618
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田口 智章 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20197247)
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研究分担者 |
野中 和明 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (90128067)
中山 功一 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50420609)
大賀 正一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60233053)
山座 孝義 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80304814)
山座 治義 九州大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (30336151)
松浦 俊治 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10532856)
増本 幸二 筑波大学, 医学医療系, その他 (20343329)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 先天性代謝異常症 / 先天性凝固異常症 / 乳歯幹細胞 / 肝移植 / 再生医療 |
研究概要 |
1) SHEDから肝細胞への分化誘導:ヒト乳歯歯髄を酵素処理することで細胞を分離し、付着性コロニーを形成させる事でMSCの一種であるSHEDを単離した。さらにSHEDに肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor, HGF)、oncostatin Mなどを含む肝細胞分化無血清培地で肝細胞-like cellへの分化に成功した。その細胞は培養液から尿素、アルブミンが検出できたため肝の機能の一部を有することが確認できた。さらにこの細胞を球状の構造体sphereとして培養することに成功した。組織学的にも肝細胞に特有のリボン状の配列がみられている。またこの細胞をヌードマウスの脾臓に注射すると肝臓内に組織学的に生着していることが確認できた。2) SHEDの免疫寛容に関する研究:SHEDから肝細胞分化の各段階における副分子などの表面マーカーをflow cytometryにて確認中である。また、T細胞の反応性とアポトーシスから、免疫寛容にどの分化段階が肝再生に適切であるかを検討中である。3) 立体的肝細胞構造体のサイズ、デザインの検討:家畜豚から肝細胞を分離培養し球状の構造体sphereを作成。さらにそのsphereを積み重ねて生存を維持できるかを検討している。構造体としてin vitroで内部に培養液が浸透できるような立体的デザインであるチューブ状のものを作成し、細胞の生存率及びアンモニア代謝やアルブミン産生などを指標に評価している。またsphere内部へ培養液が浸透しやすいように内皮細胞を共培養しての効果も検討している。4) 移植適応疾患モデルでの検討:先天性代謝異常および凝固異常症のモデル動物について文献的およびカタログ等で情報収集を開始した。血友病マウスはB6 backgroundのF8-KO miceを使用する予定でbreedingの準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) SHEDから肝細胞への分化誘導:ヒト乳歯歯髄からSHEDを単離する方法は確立した。またこのSHEDの性質を調べる研究も並行して行われている。さらにSHEDに種々の因子を作用させ肝細胞-like cellへの分化に成功し、その細胞は培養液から尿素、アルブミンが検出できたため肝細胞様の機能の一部を有することが確認できたことは大きな成果である。この肝細胞-like cellから球状の構造体sphereとして培養することに成功したことも高い達成度と評価できる。このsphereがある程度長期生存できることも組織学的に確認できた。またこの細胞をヌードマウスの脾臓に注射して肝臓に生着していることが確認できたこともsphereとしてではなく細胞療法としての可能性の検討も開始された。このカテゴリーは一年間としては達成度が高い。2) SHEDの免疫寛容に関する研究:SHEDの免疫寛容性をチェックする目的で開始された。表面マーカーを数種類チェックすることができた。この研究は当初計画していなかったが免疫学的な手法をとりいれて開始された。追加の研究として開始されたので達成度はまだ評価できない。3) 立体的肝細胞構造体のサイズ、デザインの検討:肝細胞の培養は成熟肝細胞の維持は技術的にかなり難しく、さらにsphereとして生存を維持する培養条件の確立に時間を要している。ただし現在円筒状の構造体としての形状の維持はできているのである程度の達成度は評価できる。4) 移植適応疾患モデルでの検討:文献的およびカタログ等で情報収集を開始した状態で、まだ移植疾患適応モデルを使用する状態には至っていない。実験としては未着手であり、達成度は評価できない。
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今後の研究の推進方策 |
1) SHEDから肝細胞への分化誘導:現在SHEDから肝細胞-like cellへの分化に成功し、その細胞の機能の一部を確認できたが、肝細胞の機能は非常に多いのでさらに機能評価の幅を広げていく必要がある。さらに治療の対象と考えている凝固因子や代謝性疾患に欠如している酵素の産生が行われているかのチェックも必要である。また肝細胞-like cellから球状の構造体sphereとしてさらに長期に生存維持できる方法の開発も目標としてあげられる。またこの細胞をsphereでなく単なる細胞療法としての可能性も検討する。SHEDから肝臓を作るにはかなりの細胞数を要するので、SHEDの増殖能をあげて幹細胞のsourceとして十分な供給ができる方法の確立も並行して進めていくべき課題である。2) SHEDの免疫寛容に関する研究:SHEDはヒト由来の細胞であるが免疫寛容性を有するのが大きなメリットでいままでの研究でヒトからマウスへのxenotransplantでも生着できることが確認されている。これはallotransplantは容易に行えることを意味しており。そのメカニズムの解明と臨床への応用にあたりメリットがどこまで生かせるかの検討が重要である。細胞の表面マーカーや免疫担当細胞との共培養などでさらに詳しい分析を行う予定である。3) 立体的肝細胞構造体のサイズ、デザインの検討:成熟肝細胞の維持は技術的にかなり難しいため、分化の途上にあるSHEDから分化させた肝細胞like cellを用いたsphereを積み上げて立体構造を作成することで生存維持が可能かどうか検討する。培養での維持が確立されたら、in vivoでの適切な移植部位の選定に関する実験を開始する。4) 移植適応疾患モデルでの検討:まだ移植疾患適応モデルを使用する段階には至っていない。臨床例での本治療の適応についての検討を開始する予定。
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次年度の研究費の使用計画 |
1) SHEDから肝細胞への分化誘導:研究費は培養液に必要な薬品や検査に必要な試薬など消耗品と成果発表の旅費に使用予定。2) SHEDの免疫寛容に関する研究:研究費は抗体や薬品など消耗品と成果発表の旅費に使用予定。3) 立体的肝細胞構造体のサイズ、デザインの検討:研究費は培養液に必要な薬品や検査に必要な試薬など消耗品と成果発表の旅費に使用予定。4) 移植適応疾患モデルでの検討:研究費は情報収集のための旅費と書籍購入に使用予定。
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