研究概要 |
組織幹細胞を起点としたin vivoでの組織構築過程を理解することは、固形臓器を対象とした再生医学の開発において極めて重要な課題である。本研究では、高度な血管網を有する肝臓を対象とし、三次元培養による in vitro分化誘導系の確立、クラニアルウインドウ法を用いた目視下での血管網の人為的再構成法、さらに最新の三次元的ライブイメージング法を組み合わせることにより肝幹細胞を起点とした肝臓組織の構築過程の4Dイメージング系の確立を試みた。 免疫不全 (NOD/SCID) マウスの頭蓋部に作製したクラニアルウインドウの内部にヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) と間葉系幹細胞 (hMSC) を移植した後、共焦点型超高速ライブイメージング顕微鏡によるタイムラプス解析系を確立した。確立したタイムラプス解析系を用いて移植後の血管網も再構成過程を観察したところ、再構成されたヒト血管ネットワークは、ホストのマウス血管と接合しており、マウス血管からの血流も観察された。次にヒト胎児に由来する未分化な肝臓細胞をHUVEC、hMSCとともにクラニアルウインドウの内部に包埋し、肝臓組織の形成過程のイメージングを試みた。その結果、移植後14日までに、HUVECとhMSCに由来する血管ネットワークが構築され、さらに、この血管ネットワークの内部でヒト肝臓細胞集塊が形成された (Takebe T, Koike N et al. Nature, Accepted)。本研究により、肝臓組織の再構築過程を高い解像度で動的に捉えるための基盤技術を構築することに成功した。 本研究により開発された4Dイメージング系は、ヒト臓器の発生過程における細胞間相互作用の解明に極めて有用である他、ヒト発癌プロセスを組織レベルで解析する上でも有用視され、創薬開発のプラットホームとして優位性を持つ。
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