研究課題
本研究は、自家組織とマトリックス成分を用いて自己の体内において自らの移植臓器を自在に設計・誘導・再生するという、新しい着想に基づく移植医療技術を応用し、心臓・血管などの管腔壁の欠損補填に用いることが出来て、生体適合性の高い自家結合組織シートの開発を目的としている。平成23年度はBiosheetの安定した作成に向けて、鋳型の設計を行った。①2×2cm、厚さ2mmのアクリル製板状基材をビーグル皮下に8週間埋入した。予備実験でも認められたように、同形状の基材ではやはり均一な組織を作製することは困難であった。比較的均一に作製できたBiosheetを、後述のパッチ移植実験に用いた。一方、これまでに用いているシリコーン製チューブ状基材により作製したBiotubeは組織が均一であり、これを切開してシートとして用いるのが、現時点では最も安定した方法という結論に達した。②20mm, 30mm, 50mm径のチューブ状鋳型で作成された組織を評価。径が増すとともに組織の厚みは増し、耐圧性は向上するという結果を得て、対象となる臓器に応じて鋳型のサイズを変化させることで、補填物質として対処可能となる可能性が示唆された。③人工心肺を用いて大血管に移植する実験モデルが最終目標であるが、これは安定した結果を得られるまでにコストと時間がかかり過ぎるため、人工心肺非使用下での移植モデルを考案した。ビーグル犬を左開胸し、左心耳を部分遮断して切開を加えた上で、同部位にBiosheetをパッチとして縫合して切開部を補填閉鎖することに成功した。平成24年度は作製したモデルによる移植実験を行い、早期成績を評価した。移植実験は計5頭に行い、いずれも無事終了している。術後経過は良好で、術後1週後の心エコーで右房内の明らかな血栓形成や壁の瘤化を認めていない。摘出組織もわずかな血栓を認めるのみであった。
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J Artif Organs
巻: 99(2) ページ: 59-65
PMID:23192398