研究課題/領域番号 |
23659622
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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研究分担者 |
岩橋 誠 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (70244738)
谷 眞至 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60236677)
中森 幹人 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10322372)
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40398459)
廣野 誠子 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (60468288)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 癌に対するウイルス療法 / オートファジー細胞死 / 腫瘍溶解ウイルス / ヘルペスウイルス |
研究概要 |
本研究は,難治性消化器癌(膵癌・スキルス胃癌・食道癌)に対するオートファジー細胞死誘導型ヘルペスウイルス製剤の開発を主な目的とし,当該年度(平成23年度)は,網羅的遺伝子解析により我々がすでに同定した分子(食道癌:URLC10, 胃癌:TSP-1,膵臓癌:MUC16, Mesothelin)を認識して特異的に感染するヘルペスウイルス,Gemcitabine耐性を誘導するISG15をサイレンス状態に出来る様々な標的型ヘルペスウイルスの開発,特に,ヘルペスウイルスのenvelope glycoproteinであるgD部分の遺伝子工学的改変を主目的とした. まず,ヘルペスウイルスのgD部分を含むシャトルベクターの改変に取りかかったが,この遺伝子改変には相当の時間を要することが研究推進中に予想され,挑戦的萌芽研究2年間の当該年度内を越えての目標達成が見込まれるかも知れない可能性がある.そこで,これに関しては,次年度に引き続く継続課題とし,継続困難であれば,速やかに研究内容を修正しなければならない. 一方,平行して進めていたオートファジーとヘルペスウイルス関連性の検証に関して,以下に示す新たな知見が得られた.諸家の報告では,腫瘍溶解型アデノウイルスの場合,オートファジーは腫瘍溶解においてオートファジーは正の効果作用とされている.我々の当該年度の研究では,胃癌細胞において,オートファジー現象はほぼ恒常的に認められてはいるものの,腫瘍溶解型ヘルペスウイルスの複製には,むしろ抑制的に関与している可能性が示唆された.腫瘍溶解型ヘルペスウイルスにオートファジー機能を付加することはむしろ逆効果となる可能性があり,次年度の研究計画において非常に有用な知見であると考えられる.これはヘルペスウイルス療法研究において新しい知見になる可能性があり,非常に期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の全体構想に則せば,難治性消化器癌に対する標的化ウイルス製剤の開発という点では,ヘルペスウイルス1型のgD遺伝子の遺伝子工学的改変により,HER2陽性胃癌に対して選択的に感染する標的型ヘルペスウイルスの開発から取りかかったが,予定の研究計画に比し,若干の遅れが生じている.また,切除標本のHER2陽性率が低い現状を考えると,他の分子を標的としたウイルス製剤の開発のほうが望ましかもしれないと考えている. しかし,オートファジー現象と腫瘍溶解型ヘルペスウイルスに関する研究計画に関しては,新しい知見が得られたこともあり,次年度の研究を進めるにあたり,前倒し出来た進捗状況である. 以上,当該年度の研究の達成に関しての総合的な見解は,挑戦的萌芽研究の2年計画初年度としては,おおむね順調と考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は,当初の計画のひとつであったヘルペスウイルスのgD部分を含むシャトルベクターを用いて,難治性消化器癌に高発現している分子に選択的に結合する分子の改変に関して,この遺伝子改変には相当の時間を要することが研究推進中に判明し,当該年度内を越えての目標達成が見込まれたこと,さらに,実地臨床応用を想定して,例えば,胃癌では,切除標本のHER2分子の発現頻度を免疫染色して検討した結果,全体の10%程度の陽性率であり,欧米からの報告に比べて低頻度であることが判明したことで,我が国の胃癌症例に対するヘルペスウイルス製剤開発に,例えば,HER2分子だけに着目することは得策ではないと考える.また,他の難治性消化器癌(膵癌,食道癌)についても同様のことが当てはまると推察する. そこで,これに関しては,次年度に引き続く継続課題とするものの,挑戦的萌芽研究かつ2年間でのアウトカムを考えた場合,今後は,細胞死の新しい概念であり,かつ,すべてが解明されていないオートファジー現象と腫瘍溶解型ヘルペスウイルスに関する研究を中心として研究を推進していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画では,ルシフェラーゼ発現システムによる遺伝子発現系の構築や,その他の必要な遺伝子工学的消耗品に関しては,合成委託を行う予定です.これについては,研究期間の短縮,精度向上,予算削減の面からも有用と考えます.そのため,備品の新規購入の必要性はありませんが,挑戦的研究という性格上,かなりのトライ・アンド・エラーの繰り返しが予想されるのですべてを消耗品に充てる予算となりました. また,円滑に研究を進めていくうえで,情報交換も必要と考えております.情報交換のため学会(日本外科学会,アメリカ癌学会)で成果を公表するために必要な出張経費,および論文発表の際に必要と考えられる諸経費(論文校正費,投稿費,印刷費)を計上しております.
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