研究課題/領域番号 |
23659622
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
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研究分担者 |
岩橋 誠 和歌山県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (70244738)
谷 眞至 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60236677)
中森 幹人 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10322372)
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40398459)
廣野 誠子 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60468288)
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キーワード | 癌治療用ウイルス / ウイルス療法 / ヘルペスウイルス / オートファジー細胞死 |
研究概要 |
本研究は,難治性消化器癌(膵癌,スキルス胃癌,食道癌)に対する新しい治療方法の開発の目的で,オートファジー細胞死誘導型ヘルペスウイルスを改変した癌治療ウイルス製剤の開発を研究推進してきた.初年度(平成23年)は,網羅的遺伝子解析により,我々がすでに同定した分子を認識する分子標的型の癌治療用ヘルペスウイルス製剤の開発に取りかかるものの,予定期間内での目標達成が見込まれない可能性もあるために,オートファジー細胞死を強く誘導するヘルペスウイルスの開発にその重きをシフトした. 元来,オートファジー細胞死は癌治療用アデノウイルスでは正の作用をもたらすと報告されていたのにもかかわらず,ヘルペスウイルスではむしろ,負の作用を誘導することが,本課題を進めていくうえで判明した.そこで,初年度の研究成果を熟慮した結果,ヘルペスウイルスを用いた癌治療用ウイルス製剤の開発において,難治性消化器癌細胞におけるヘルペスウイルスの感染後に必須のウイルス複製能の増強にその焦点を当て,ウイルス複製に重要なシグナルであるSOCS-3 (suppressor of cytokine signaling 3)と,ヘルペスウイルス療法の関連性について検討した. その結果,ウイルスによる抗腫瘍効果の低い消化器癌細胞株では,ウイルス感染後のSOCS-3の発現が著しく低下しており,ウイルス複製能も同様に抑制されていることが判明した. そこで,SOCS-3分子を発現する癌治療用ヘルペスウイルス製剤を遺伝子工学的に短期間で作製してその効果を検証したところ,SOCS-3発現を相補できることで,in vitroの実験系において,複製能,抗腫瘍効果を誘導することを確認できた. また,オートファジー現象はウイルスの殺細胞効果には抑制的に作用する反面,抗腫瘍免疫誘導の点において期待できることが判明し,新規課題の研究に繋がることが示唆された.
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