研究課題
エストロゲン、プロゲステロン、HER2受容体のいずれも発現しない乳癌はTriple-negative乳癌(TNBC)といわれ予後不良とされている。我々は先行研究からERβ陽性TNBCに対するTAM療法の有用性を検証する本研究計画を立案した。まず先行研究の対照研究として、TAMを補助療法に使用していない患者666例でのERβ発現の意義を検証した。ERα陰性、PR陰性患者群を対象にERβの発現とTAM療法の影響を検討したところ、ERβ陰性では治療薬であるTAMを投与することで逆に予後不良となる可能性が示唆された。次にERβに親和性が高く、アゴニスト作用をもつアンドロゲン代謝物の血液中濃度を検討した。閉経後乳癌60例の血清をLC MS/MS法により測定した。血清中3β-Adiol濃度は平均3.49 pg/ml(95%CI:2.69-4.53)であり、エストラジオールと同程度の濃度で存在することから、臨床試験時の効果に影響を及ぼしうると考えられた。さらに平成24年度はERβと高頻度に共発現し、TNBCの治療標的となると考えられているAndrogen receptor (AR)の発現について検証した。ARは予後良好の予測因子となったが、ERβの発現の有無がその効果に影響を強く及ぼしていた。さらに細胞実験としてTNBCでERβ陽性のMDA-MB231細胞、ERβ陰性のHST578t細胞において、TAMの影響を検証した。ともに増殖抑制作用は認めず、ALDH1を指標としたがん幹細胞分画への影響を現在評価している。今後、本仮説の臨床試験を実施するには、TNBC閉経後患者への限定、治療前アンドロゲン代謝物濃度の測定、AR発現の評価、ERβの正確な陽性・陰性評価が必要であることが、本研究によって確認された。これらのデータを元に、新たな臨床研究計画を進めていきたい。
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