研究課題/領域番号 |
23659626
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
上田 しのぶ 東京医科大学, 医学部, 助手 (00521874)
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研究分担者 |
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 教授 (80251304)
高梨 正勝 東京医科大学, 医学部, 助教 (80312007)
大野 慎一郎 東京医科大学, 医学部, 助教 (90513680)
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キーワード | 癌 / microRNA / エキソソーム |
研究概要 |
microRNA(miRNA)はがんの発生や抑制に関与しており、血中ではエキソソームによって運ばれている。また、がん幹細胞は現在の治療法では残存し再発や転移を起こす可能性がある。応募者らはがん幹細胞の増殖を抑制するmiRNAをエキソソーム中に取り込ませ、血中に投与することによってがんの治療ができると考えた。さらにがん幹細胞に結合する分子をエキソソーム膜上に発現させることにより、miRNAががん幹細胞内へ高率に侵入可能となると考えた。本研究ではエキソソームによるmiRNAの新しいデリバリー法を確立し、がん幹細胞を標的とした治療への応用を目指している。これまでに乳がん細胞膜に存在するEGFRに対するリガンド(EGFR結合ペプチド:GE11)をエキソソーム膜上に発現させることことができた。このGE11ペプチドはEGFRに結合するが、下流のシグナルを活性化させないことが報告されている。GE11発現エキソソームは、より効率よく乳がん細胞(HCC-70)に接着し、取り込まれることをin vitroで確認した。今年度はin vivoにおいて蛍光標識したGE11発現エキソソームが、コントロールエキソソームに比べてより効率よく乳がん細胞(HCC-70)に接着し、取り込まれることを確認した。さらには乳がん幹細胞の維持に関与していることが報告されているlet-7aを内包したGE11発現エキソソームを作製することができた。マウスにヒト乳がん細胞(HCC-70)を移植し、作製したエキソソーム(let-7a/GE11/HEK293エキソソーム) を尾静脈より投与すると、がん細胞増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。以上の結果より、がん幹細胞の維持に関与しているmiRNAをエキソソームに内包し、血中に投与することによってがんの治療への応用が可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定ではがん細胞移植モデルにおけるがんの増殖抑制効果については平成25年度に行う予定であったが、1)エクソソームにがん細胞特異的なリガンドを発現させることができたこと、2)さらにはがん幹細胞の維持に関わっているlet-7aをエクソソームに内包することができたこと、3)このエクソソームは血中投与でも効果的にがんへmiRNAを到達させることができ、かつがん細胞増殖抑制効果を得ることができたため、予定を前倒しして論文を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
実際に臨床応用する際には、免疫反応が問題となる可能性がある。エキソソームは細胞膜成分などの蛋白質から構成されているため拒絶反応が起こる可能性があるが、これは患者自身の細胞よりiPS 細胞を作製しエキソソームを精製することによって解決できると考えている。 さらに将来的には、これまでのホルモン療法や化学療法で効果が得られなかったタイプのがんについても、がん幹細胞上のレセプターに結合できる分子をエキソソーム上に発現させた患者由来iPS 細胞を作製し、精製したエキソソームを投与することによって治療効果が得られることが期待できる。本研究成果は個々のがん細胞のタイプに対応するオーダーメイド医療への発展性をも想定できるものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度未使用額と次年度請求額合わせて、直接経費として979,451円の使用予定である。そのうち学会発表のための旅費として100,000円を使用する計画であり、それ以外は薬品・試薬、プラスチック器具、実験動物購入費などの物品費として使用する予定である。
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