研究課題/領域番号 |
23659628
|
研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
守本 祐司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育学部医学科専門課程, 准教授 (10449069)
|
研究分担者 |
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育学部医学科専門課程, 准教授 (70531391)
|
キーワード | 光線力学療法 / 薬剤耐性菌 / 発光細菌 / MRSA / メチレンブルー / 膝関節炎 |
研究概要 |
整形外科領域の術後感染はきわめて難治性であり、特にメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)などの多剤耐性菌による感染は長期間の抗生物質投与と侵襲的治療を要し、患者のQOLが著しく低下するため、新たな治療法の開発が望まれている。 我々は、局所の細菌感染症に対する光線力学療法(PDT)のin vivoにおける治療効果発揮に際して重要となる要因の探索を行っている。そこで初年度(H23年度)では第一に、MRSA感染症に対するPDTが治療効果を発揮するための光増感剤の特性につき検討し、数種類の実験試薬や食品着色料等について検討した結果、メチレンブルー(MB)とトルイジンブルー(TB)の2つが有効であることを明らかにした。そこで、長波長に光吸収域を有するMBを用いて、in vivoにおけるPDT(MB-PDT)の検討を行ったところ、治療効果が得られた光照射エネルギーの範囲は50-80 J/cm2であった。また、MB-PDTは感染抑制効果を直ちに発揮するのではなく、PDT実施後2日目から遷延的に治癒効果を発揮した。 第二年度(H24年度)では、MB-PDTによる細菌感染への治療効果のメカニズムにつき解析を進めた。その結果、至適条件下(照射エネルギー: 50-80 J/cm2)における PDT は、感染局所に好中球を遊走・集積させる作用を発揮することがわかった。さらに、集積した好中球によるMRSAの貪食が、治療効果において重要な役割を果たすことがわかった。また、PDT を前処置として用いれば、その後のMRSA 感染の増悪を抑制した。PDT は薬剤耐性菌による難治性の化膿性関節炎をはじめ、広く骨・関節領域における感染症の治療と予防のための新たな方法となることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書提出当初の計画では、光増感剤として5-アミノレブリン酸(5-ALA)使用を予定していた。しかしその後の検討により、5-ALAを用いたPDTでは十分な細菌感染抑制効果が期待できないことが予想されたので、あらためて、細菌感染に対する PDT に適した光増感剤の選定を行った。その結果、メチレンブルー(MB)が検討した範囲においてはもっとも有効性の高い光増感剤であることがわかった。以降、H23年度計画で示した通り、発光細菌を用いた感染動物モデルを確立でき、in vivoにおいてMBを使用したPDTの検討も行い、感染動物モデルにおいて高い治療効果がもたらされることを示すことができた。さらに、H24年度計画で示した通り、in vivoにおけるMB-PDTの至適条件を決定して、局所における好中球の挙動を解析して治療効果のメカニズムを明らかにすることができた。以上の進捗状況を鑑みて、研究はおおむね順調に進展していると思料した。
|
今後の研究の推進方策 |
二年間の研究成果として、MBを使用したPDTがマウス膝関節感染モデルにおいて高い治療効果がもたらすことが明らかになり、その効果メカニズムにおいて好中球の遊走・集積が重要であることを見出した。そこで以後はこの効果機序についてさらに追及していく。マクロファージや滑膜線維芽細胞からの好中球走化因子(主にCXCケモカイン)の産生が関与していると推定できるため、CXCケモカインであるMacrophage inflammatory protein (MIP) -2やKeratinocyte-derived cytokine (KC) のPDT前後における関節液中濃度の変動を、フローサイトメトリー、ELISA等の手法を用いて計測し、関節内への好中球集積に関わるシグナルの同定・定量を進めていく予定である。以上の検討により、臨床応用可能な治療としての確立を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費はおもに、実験を行うのに必要な試薬・消耗品の購入に充てる。とくに、治療を誘導するのに重要な細胞内の発現タンパク解析に必要な経費に充てることにしたい。その他の費用としては、研究に関する打ち合わせを行うための会議費、学会参加費、成果報告のための印刷費、得られた成果を国際一流誌に投稿するための外国語論文の校閲の費用および投稿料などへの支弁も予定している。
|