研究課題/領域番号 |
23659630
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片岡 昭彦 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (90399832)
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研究分担者 |
尾崎 倫孝 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 教授 (80256510)
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キーワード | 光プローブ / 生体イメージング / 分泌型ルシフェラーゼ / 癌細胞機能解析 |
研究概要 |
In vivoによる実験として、マウス皮下腫瘍移植モデルを作成した。乳癌の細胞株MDA-MB231、胃癌細胞株(MKN-45/NUGC-4)、大腸癌細胞株(SW480)の細胞株をそれぞれ用いて、皮下に移植し、様々な移植条件(細胞数、マトリゲル濃度、移植ボリューム)を試み、腫瘍成長への最適条件を検討した。その結果、200ulのhalf matrigel内に10の5乗レベルの細胞を背部に移植することで、生体イメージング測定、血液中ルシフェラーゼ活性測定、サイズ測定に最適であることを見出した。移植細胞としては、乳癌細胞株および胃癌細胞株にてまず検討を開始することとした。 腫瘍細胞移植後、マウスの皮下腫瘍のサイズの変動を記録するとともに、生体イメージング法により腫瘍サイズを評価、さらに腫瘍細胞から分泌されたルシフェラーゼ活性を同時に評価した。 その結果、腫瘍からは、2種類のシグナルが得られたものの、両者のシグナルバランスが悪く(同程度にシグナルが得られない)、プローブのデザインの変更を行なった。再び、in vitroの実験に戻り種々の方法を試したが、最終的にIRESシステムを利用して、同時に二つの遺伝子を同じプラスミドに挿入し、それによりシグナル強度のバランスを得た。 現在、このプローブを導入した腫瘍細胞にて、移植実験を行なっており、シグナルのバランス、血液中に分泌された分泌型ルシフェラーゼ(C-Luc)活性の測定、イメージングのためのルシフェラーゼ活性(F-Luc)および腫瘍サイズおよび転移との関連を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の目標は,新規分泌型デュアルルシフェラーゼプローブ導入膵癌細胞を作成し,マウスをもちいたin vivoモデルにて、癌の進展に伴う種々の遺伝子活性を定量的かつ経時的に少量の採血のみで計測し,かつその分布をin vivoイメージングで可視化する。実現すれば,癌の進行における実際の生体内での遺伝子発現および腫瘍伸展における分子生物学的な解析を並行して行う画期的な研究となる。本技術は,生体内での標的分子の動態を低侵襲かつ安価な方法で経時的・持続的に評価でき,通常の光イメージング技術と異なり大動物でも理論的には応用可能で,プローブ導入技術の問題がクリアされればヒトでの応用の可能性も有するなど応用範囲の広い研究である。現時点では、基本的な技術開発(デュアルルシフェラーゼプローブの細胞への最適なバランスでの導入法の確立)の開発に成功しており、マウスへの癌細胞移植条件の検討も終了し、マウスをもちいた生体イメージング実験、血液中ルシフェラーゼ活性測定、腫瘍サイズ測定等の基盤となる実験は順調に進んでいる。概ね良好なペースで研究は進んでいるが、分泌型と非分泌型のルシフェラーゼを細胞内にバランスよく発現させることに関しては、若干の時間と工夫を要した。今後、様々な条件検討を進めながら、「遺伝子発現に対するレポーターとしてのルシフェラーゼの遺伝子導入」と「腫瘍細胞の存在を示すルシフェラーゼ遺伝子の導入」をバランスよく行ない、最終的に、その細胞株の移植モデルにて、遺伝子発現、腫瘍サイズの関連、浸潤・転移との関連に関する解析をする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
ヌードマウスに対する腫瘍細胞株の移植モデルをもちいて、遺伝子発現、腫瘍サイズの関連、浸潤・転移との関連に関する解析をする。 分泌型(あるいは非分泌型)のルシフェラーゼを組み込んだベクタープラスミドに対して、増殖、生存・抗アポトーシス、酸化ストレス、小胞体ストレスあるいはEMT(上皮間葉移行)に関連する遺伝子のプロモータを挿入し、レポータープラスミドとする。それぞれのレポータープローブを作成後、癌細胞(膵癌、胃癌、大腸癌細胞株)に対して、transient transfectionをおこない、細胞内発現、細胞外分泌を確認する。細胞内発現と機能は、アトー社製クロノス・ディオをもちいて経時的に測定し、細胞外分泌は通常のルミノメーターをもちいて測定する。EMT誘導の確認には、①TGF-β投与 及び ②Gemcitabine少量持続投与を行ない確認する。安定導入株の作製:それぞれのプローブ機能が確認された後、腫瘍細胞株にたいして安定的に遺伝子を導入する。安定細胞株が作製されたのち、③と同様に、再度プローブの機能確認実験を行ない、刺激に対して十分に反応し、in vivoでの実験に使用できることを確認する。同時に、作製した2種類のプローブを、同時に腫瘍細胞に安定導入する。これにより、ひとつの細胞株で二つの遺伝子発現を検討することが可能となる。 こうして作製されたデュアルプローブをin vitroにて、最終的に機能確認を行なう。同時に、増殖能(MTT assay),浸潤能(Boyden chamber法)や代表的分子マーカー(CEA等)等,表現型の親株と比較検討する。 これらの後、マウス移植モデルにて、レポーター機能を検討する。皮下移植後の肝・肺転移モデルにおいて,各臓器での腫瘍細胞全体,及び浸潤部の中での血中分泌型C-Luc活性/非分泌型F-Luc活性の上昇の相関を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究では、研究費を主として消耗品(遺伝子導入、細胞培養および増幅などに関わるディスポーザブル・試薬の購入)あるいはマウスを用いた小動物実験(マウス購入費、飼育費、試薬代など)として用いる。細胞あるいは生体イメージング実験においては、ルシフェラーゼにたいする基質の購入費用としても使用する。また、データを研究会、学会において発表するための旅費等として使用する。平成24年度に計画していた2種類の光プローブ遺伝子の細胞内へのバランスよい導入法の開発に時間を要したため、研究費の未使用額が生じた。平成25年度は、IRES法でのバランスよい遺伝子導入法を確立し、その後種々の遺伝子を細胞に導入するための費用として使用する。
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