研究課題/領域番号 |
23659635
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 講師 (20282353)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | がん治療 / 磁性ナノ粒子 / マクロファージ / クロドロネートリポソーム / DDS |
研究概要 |
抗がんナノ粒子は低分子化合物、遺伝子ベクター、snRNA、放射性物質等を内包し、それぞれの抗腫瘍薬剤の効果発現を底上げする新たなDrug delivery system(DDS)の形態として注目されているが、腫瘍に到達する前に肝臓Kupffer細胞を中心とする組織マクロファージに捕捉されてしまう弱点がある。本提案は、患者の細網内皮系を一時的に抑制する事によって、抗がんナノ粒子の腫瘍への集積量を高める、という独自のアイデアである。 この仮説を証明するために、リポソーム化クロドロネートをヌードマウスに投与してマクロファージを一時的に消去し、2日後にPEG化リポソーム製剤であるドキシルを1.25, 2.5 and 5.0 mg/kgの量で投与した。Kupffer細胞が消去された結果として、ドキシルの肝臓への非特異的集積は36%から26%に減り、 それに呼応する様にドキソルビシンの血清中濃度は1.25 mg/kg投与群の1日目において3倍 (11 → 33 μg/mL) に増えた。さらに、腫瘍へのドキシルの集積は0.78 から3.0 μg/g-tissueと4倍に増え、 ドキシルによる腫瘍抑制効果も増強され、24日目の腫瘍体積も751mm3 から482 mm3に縮小した。 結論として、クッパー細胞を抑制する治療戦略は抗がんナノ粒子であるドキシルと血中濃度を高める事が証明され、様々なナノ粒子製剤を使った抗癌治療に汎用出来る基幹技術になる可能性を示せた。本成果は国際誌に掲載済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目的とした独自の仮説を1年で証明する事ができ、国際誌への発表を終えた。肝臓のKupffer細胞を一時的に除去してからナノ粒子製剤を投与する方法は、各種の治療薬に方汎用出来る基幹技術になる可能性を示せた。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度の成果は皮下腫瘍を対象に行なったものであるが、多発肝転移、腹膜播種等のより臨床がんに近い動物モデルにおける、マクロファージ抑制による抗がんナノ粒子製剤の増強効果を確認する。また、ハーセプチン、セツキシマブ等の比較的分子量の大きい抗体治療薬も、肝臓のKupffer細胞を初めとする細網内皮系に取り込まれて腫瘍への送達が妨げられている可能性がある。これら、ある程度治療効果が確かめられている抗体薬に先立ちクロドロネートリポソームを先行投与して効果の増強を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
クロドロネートリポソームの先攻投与が抗がんナノ粒子製剤のDDSに高いブースト効果をもたらす事を証明出来た。ハーセプチン、セツキシマブ等の比較的分子量の大きい抗体治療薬も、肝臓のKupffer細胞を初めとする細網内皮系に取り込まれて腫瘍への送達が妨げられている可能性がある。これら、ある程度治療効果が確かめられている抗体薬に先立ちクロドロネートリポソームを先行投与して効果の増強を確認する。H24度は、様々な治療薬とマクロファージ消去の組み合わせを解析して行く計画で、H24年度の研究費は、この抗体薬、動物の購入に充当する。
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