研究課題
抗がんナノ粒子は新たなDrug delivery system(DDS)の形態として注目されているが、腫瘍に到達する前に肝臓クッパー細胞を中心とする組織マクロファージに捕捉されてしまう弱点がある。本提案では、患者の細網内皮系を一時的に抑制する事によって、抗がんナノ粒子の腫瘍への集積量を高められる事を独自に証明した。リポソーム化クロドロネートを投与するとマクロファージを一時的に消去する事が出来る。2日後にPEG化リポソーム製剤であるドキシルを投与した所、ドキシルの肝臓への非特異的集積は36%から26%に減り、 それに呼応する様にドキソルビシンの血清中濃度は3倍に増えた。さらに、腫瘍へのドキシルの集積は0.78 から3.0 μg/g-組織と4倍に増え、 ドキシルによる腫瘍抑制効果も増強され、24日目の腫瘍体積も751mm3 から482 mm3に縮小した。 結論として、クッパー細胞を抑制する治療戦略は抗がんナノ粒子であるドキシルと血中濃度を高める事が証明され、様々なナノ粒子製剤を使った抗癌治療に汎用出来る基幹技術になる可能性を示せた。平成24年度は、a)独自に開発した磁性ナノ粒子を腫瘍に集積させる上でマクロファージ消去を組み合わせる事、さらに、b) 腫瘍血管特異的透過性亢進ペプチド(iRGD)を同時投与する事により能動的集積効果を上乗せする事を目指した。しかしながら、独自に開発している磁性ナノ粒子の血液中での分散安定性が確立出来ず(=溶媒に懸濁している段階では液体だが、血清中に入れると凝集して沈殿してしまう)マクロファージ消去による上乗せ効果は確認出来なかった。また、iRGDペプチドの上乗せ効果自体も限定的で、マクロファージ消去と組み合わせるには至らなかった。今後、既に上市されているナノ粒子+マクロファージ消去の効果については、研究を継続して行く。
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