研究課題/領域番号 |
23659639
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳衛 宏宣 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (30212278)
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研究分担者 |
高橋 浩之 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70216753)
伊豫本 直子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40508173)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ガドリニウム化合物 / 中性子捕捉療法 / Drug delivery System / Liposome |
研究概要 |
我々は中性子捕捉療法を基盤とする新規の化学放射線療法を推進しているが、従来の放射線治療において用いられているX線量を軽減させた形で同当の効力を引き出す治療法、すなわち、(1) 金属原子にX線を照射することにより発生する電子線を用いて直接癌細胞を障害させる治療法、(2) 生じた光粒子を用いて光線力学的治療(PDT)にて間接的に癌細胞を障害させる治療法、との併用効果についても検討している。本年度は、ナノレベルでのデリバリーシステムを用いてガドリニウム中性子捕捉療法(GdNCT)の抗腫瘍効果を検討した。我々は、静脈投与による全身投与にてガドリニウムを腫瘍部位まで送達するために、血管内皮と容易に結合しない表面電荷が弱アニオニックなリポソーム(サイズ:100nm~200nm)にGd化合物を封入させ、Colon 26大腸癌腫瘍にリポソームを送達させることに成功した。動物用MRIを用いて投与後2時間においてGdの腫瘍集積性を見出した。この条件下で京都大学原子炉実験所にて熱中性子照射( 5 x 10E12 n/cm2 )を行い腫瘍増殖抑制効果を認めた。また、カルボキシル基結合ポリエチレングリコール(PEG-C)を基盤とした多元複合体ポリマーに、モリブデン化合物(PM-8)を封入し、腫瘍内注入した場合、PM-8化合物そのものを局所注射するよりもMo濃度の優位な貯留性を認めた。このことより、Gd化合物を同様に多元複合体ポリマーに封入し、腫瘍内局注および静脈投与した場合の腫瘍内Gd濃度を測定し、引き続きGdNCTによる腫瘍増殖抑制効果を確認し、中性子捕捉療法とX線療法あるいはPDT療法との併用効果を検討し新規治療開発へと展開していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガドリニウム封入弱アニオニックリポソームを静脈投与後に中性子捕捉療法を施行し、腫瘍増殖抑制効果を確認できた(論文準備中)。このことよりガドリニウムを用いた中性子捕捉療法の効果を確認できた。また、多元複合体ポリマーを用いた腫瘍内局所注射による元素の貯留効果を確認でき、この複合体ポリマーのガドリニウムへの応用も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ガドリニウム封入多元複合体ポリマーを用いた中性子捕捉療法の照射実験を実施し、抗腫瘍効果を確認し、新規ガドリニウムデリバリーシステムを確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ガドリニウム封入多元複合体ポリマーを用いたIn vitro および In vivoでの中性子捕捉療法の照射実験に使用する消耗品代金、京都大学原子炉実験所までの旅費代金、学会発表の諸経費および、中性子捕捉療法における新規ガドリニウムデリバリーシステムであることより特許調査などの経費にも研究費を使用する予定である。
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