研究課題/領域番号 |
23659645
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
呉 一心 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60283363)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | HCV受容体 |
研究概要 |
患者血清に含まれているHCVをCCSOマウスに静脈注射し、マウス血清中のHCV RNA genomeのコピー数をRT-PCR で定量した。結果は、野生型マウスでもCCSOマウスでも、ウイルスRNAは検出限界以下であり、ウイルス産生は起こっていないことが判明した。そこで、CCSOマウスから初代肝細胞を分離して、この細胞にHCVppを感染させた。control virusは初代肝細胞に侵入できるが、HCVppは侵入できないことが明らかになった。そこで、CCSOマウス肝臓のヒトCD81, SR-BI, Claudin-1, 0ccludin蛋白質量をウエスタンブロットで定量した。HCVppは侵入できるHuh7.5.1細胞の発現に比し、CD81は20%, SR-BIは50%, Claudin-1は5%, Occludiは90%であることが判明した。つまり、CCSOマウス肝細胞でのヒト4因子の発現はHuh7.5.1よりはるかに低く、特にClaudin-1とCD81の発現量が低値であった。また、マウス肝細胞にウイルス侵入阻害蛋白質が存在するかどうかを検定するため、Huh7.5.1細胞と野生型マウス初代肝細胞を融合させた。融合細胞はHuh7.5.1細胞に比べて50分の1のウイルス侵入しか示さないことが明らかになった。この結果は、野生型マウス肝細胞にはウイルス侵入阻害蛋白質が存在することを示唆している。以上を総合して考えると、ヒト4因子、特にCD81とClaudin-1を10倍以上発現するマウスを作成すると共に、ウイルス侵入阻害蛋白質の検索をする必要があると結論付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つのヒト因子、CD81, SR-BI, Claudin-1, Occludin蛋白質を発現したトランスジェニックマウスを作成することに成功した。そして、このCCSOマウスがHCVの感染するかどうかを判定した。結果は、感染抵抗性を示した。そこで、感染の3過程ー侵入、複製、粒子形成ーのいずれがおこっていないかを検討した結果、侵入過程に問題があることがわかった。また、CCSOマウスのヒト4因子の発現レベルがHuh7.5.1細胞よりもかなり低いことも明らかになった。このように、いくつかの問題点が明らかになったので、それぞれの問題を解決することで、目的の達成に近づいていけるという展望を抱いている。
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今後の研究の推進方策 |
4つのヒト因子、CD81, SR-BI, Claudin-1, Occludinを発現するCCSOマウスに患者からのHCVを注射してもウイルス産生は起こらなかった。また、CCSOマウスからの初代肝細胞にHCVppは感染できなかった。さらに、2011年に公表されたNatureの論文では、4つのヒト因子を100倍発現しないとウイルス侵入が起こらないことを示している。そこで、4つのヒト因子を大過剰発現させるために、CD81とOccludinあるいはClaudin-1とSR-BIをアルブミン遺伝子座位にノックインマウスを作成する。また、野生型マウスの初代肝細胞がもっている侵入阻害蛋白質はマウスCd81とOccludinではないかという仮説を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、実験用動物、試薬類などの物品費として使用する。
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