研究課題/領域番号 |
23659646
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森本 雄貴 三重大学, 医学部, 助教 (30586764)
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研究分担者 |
田中 光司 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (10345986)
井上 靖浩 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (20324535)
溝口 明 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90181916)
楠 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50192026)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 二光子レーザー顕微鏡 / 腫瘍-宿主相互作用 / 臓器特異的転移 |
研究概要 |
異種腫瘍モデルとしてRFP標識ヒト大腸癌細胞株(HT-29)、同種腫瘍モデルとしてRFP標識マウス大腸癌細胞株(SL-4)をそれぞれ、GFP標識ヌードマウス(異種腫瘍モデル)、GFP標識マウス(同種腫瘍モデル)の脾臓に接種させた大腸癌肝転移モデルを用い、転移標的部位である肝臓で癌細胞が周囲の間質応答を伴いながらどのように増殖、進展するのかを継時的に二光子励起顕微鏡を用いて生体内観察した。HT-29による肝転移巣は結節形成性増殖パターンで肉眼的転移巣形成までに約2か月を要する一方、SL-4による肝転移巣はびまん性増殖パターンで肉眼的転移巣形成までに約7日である。異種、同種腫瘍モデルにおける腫瘍-宿主相互作用の形態学的特徴は転移巣においても細胞株固有の特徴に依存し、生体内観察下でも同様の所見であった。また、5-fluorouracilやirinotecanなどの抗癌剤反応性を癌細胞および腫瘍血管に着目して生体内観察中であるが、異種、同種腫瘍モデルでの形態学的特徴に明らかな差異は今のとこと認められていない。上記結果は国内外の関連学会および関連雑誌に精力的に発表してきた。今後、肝転移巣における腫瘍-宿主相互作用、肝転移巣における癌細胞ならびに腫瘍血管における抗癌剤の反応性などを形態学的に生体内イメージングし、検討しながら、担癌個体における肝転移形成過程と臓器特異的転移のメカニズム解明を目的に二光子励起顕微鏡にて生体内観察を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異種腫瘍モデルとしてRFP標識ヒト大腸癌細胞株(HT-29)、同種腫瘍モデルとしてRFP標識マウス大腸癌細胞株(SL-4)をそれぞれ、GFP標識ヌードマウス(異種腫瘍モデル)、GFP標識マウス(同種腫瘍モデル)の脾臓に接種させた大腸癌肝転移モデルを用い、転移標的部位である肝臓で癌細胞が周囲の間質応答を伴いながらどのように増殖、進展するのかを継時的に二光子励起顕微鏡を用いて生体内観察した。HT-29による肝転移巣は結節形成性増殖パターンで肉眼的転移巣形成までに約2か月を要する一方、SL-4による肝転移巣はびまん性増殖パターンで肉眼的転移巣形成までに約7日である。異種、同種腫瘍モデルにおける腫瘍-宿主相互作用の形態学的特徴は転移巣においても細胞株固有の特徴に依存し、生体内観察下でも同様の所見であった。また、5-fluorouracilやirinotecanなどの抗癌剤反応性を癌細胞および腫瘍血管に着目して生体内観察中であるが、異種、同種腫瘍モデルでの形態学的特徴に明らかな差異は今のとこと認められていない。上記結果は国内外の関連学会および関連雑誌に精力的に発表してきた(Morimoto Y, et al. J Gastrointest Surg. 2011, Tanaka K, Morimoto Y, et al. Microsc Res Tech. 2012, Tanaka K, Morimoto Y, et al. J Oncol. 2012)。今後、肝転移巣における腫瘍-宿主相互作用、肝転移巣における癌細胞ならびに腫瘍血管における抗癌剤の反応性などを形態学的に生体内イメージングし、検討しながら、担癌個体における肝転移形成過程と臓器特異的転移のメカニズム解明を目的に二光子励起顕微鏡にて生体内観察を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
二光子励起顕微鏡を用いた肝転移巣の生体内観察法を確立でき、様々な状況下での癌細胞と間質細胞との相互作用を高倍率でとらえることができるようになった。我々が確立した二光子励起顕微鏡を用いた肝および大腸の生体内観察法は、高倍率であるが故の様々な制限もあり、可視化した現象の定量化を確立していく必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
転移巣における殺細胞性抗癌剤反応性の経時的生体内イメージング転移性大腸癌治療に一般的に用いられる殺細胞性抗癌剤5-FU, CPT-11, oxaliplatinはFOLFOX (5-FU+leucovorin+oxaliplatin)やFOLFIRI (5-FU+leucovorin+CPT-11)のような多剤併用療法で用いられるが、今回は、作用機序の異なる各々の抗癌剤が単剤で転移巣のヒト大腸癌細胞にどのように作用しているかを生体内観察する。抗癌剤の濃度依存性や時間依存性も合わせて検討する。さらに生きた同一マウスにおいて、生きた転移巣がどのように消退していくのかを経時的観察する。担癌マウスと非担癌マウスの肝転移モデルにおいても同様の比較を行い臓器特異的転移との関連も検討する。血管内癌細胞に対する転移阻害剤反応性の経時的生体内イメージング前臨床試験で検証されている新規転移阻害剤 (血管新生阻害剤、細胞接着阻害剤、マトリックス分解酵素阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤など)が類洞内に停止、接着しているヒト大腸癌細胞にどのように作用しているかを生体内観察する。血管内のヒト大腸癌細胞が、apoptosisを引き起こすのか、Kupper細胞などに貪食されるのか、血管内で増殖、増大し肝転移巣を形成していくのか、血管外へ浸潤し(extravasation)肝転移巣を形成するのかなど、生きた癌細胞の振る舞いを生体内観察し、これら転移の複雑なステップのどこにターゲットを当てた治療が有効かを評価する。さらに生きた同一マウスにおいて、生きたsingle cell levelの肝類洞内の生きた癌細胞が、どのように振る舞うのかを経時的観察する。担癌マウスと非担癌マウスの比較を行い臓器特異的転移との関連も検討する。
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