研究課題
TGA固定における組織強度、柔軟性、定着後の石灰化抑制効果について、ヒト心膜および小動物心膜を用いたex-vivo基礎実験(物理学的検証、組織学的評価、放射光によるカルシウム沈着度の評価等)を行った。並行してTGA、GA固定液それぞれの組成および処理時間の最適化を、同じくex-vivo実験を通じて図った。引き続き、TGAあるいはGA処理した心膜をラット皮下に定着させ、前臨床的in-vivo慢性実験を行った。これらの実験を通じてTGAを用いた新たな心膜固定技術の確立を図った。未処理またはGA固定自己心膜を心大血管の補填材料として用いる現法は、急性期・遠隔期の特性いずれも満足のいくものではない。固定法の標準化がなされていないことも見過ごせない。TGAを異種心膜に用いた過去の試験は人工弁作製のための長期間固定であり、本研究は初めて、TGAを用いた短時間自己心膜固定の功罪を検証し、新世代の固定処理技術への発展を期したものである。同時にTGAならびにGA両固定法の最適化を図ることにより、心膜固定技術の標準化に向けての第一歩を印した。いかに再生医療が進歩しても、on-siteで自己心膜を心血管の補填に用いる手法は、外科医にとって貴重な選択肢として残るはずである。本研究によって、先天性心疾患の外科修復の質を保証する心膜固定技術に関する基礎資料が得られたと考えている。具体的な成果は以下のとおりである。①TGA処理群においてはTsは緩徐に上昇し、GA処理と同等のTsを得るためには9-12時間を要した。②ラット自家移植慢性実験においては、カルシウム沈着はGAよりもTGA処理において軽度だった(p < 0.005)。③TGA処理大動脈においては、TN-CとMMP-9 の沈着部位はカルシウム沈着部位とは異なり、GAとTGAとでは石灰化の成立機転が異なる可能性が示唆された。
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Journal of Artificial Organs
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10.1007/s10047-014-0768-y