研究課題
本研究の目的は、人工神経を用いた新しい横隔神経再建法を開発することである。横隔神経は肺癌の縦隔浸潤に際しては切断されることがあり、従来、肋間神経移行などが行われることがあったが、再建の標準術式は未だにない。一方、整形外科領域では自己組織再生型の人工神経が臨床応用され、自家神経移植に代わる治療として注目されている。本研究ではイヌのモデルにおいて、従来の術式の中では一番好成績が予想される血管柄付自家神経移植と比較して、人工神経の有用性を胸部外科領域で検討している。 動物実験用に直径2mm、長さ3cmのポリグリコール酸チューブから内部にコラーゲンを充填した人工神経を作製した。これを用いてビーグル犬の右側横隔神経欠損部(L=2cm)の再建を行っている。コントロールには従来最も成績が良いとされてきた有茎神経移植として局所で横隔神経を2カ所で切断してマイクロサージャリーの手法で端々吻合した群を作り、6~12ヶ月にわたり経時的に各群の回復を電気生理学、X線、MR画像で評価するとともに、12ヶ月後に病理組織学的にシュワン細胞と神経軸索の回復を確認中である。 ビーグル犬に対し、右開胸下に横隔神経を横隔膜上5cmの高さで2cm切除して、これをφ2mm、長さ25mmのPGA-コラーゲンチューブで架橋再建する(N=10)。対照群として、同位部で2カ所2cm感覚で横隔神経を切除後、マイクロサージャリーの手法を用いて9-0ナイロン糸で端々吻合した群(N=10)を作製した。
2: おおむね順調に進展している
人工神経作製や動物実験モデルの作製を順調に行なっている。抑制性のシナプス伝達IPSP測定に関しては電位が微弱であり新しいシステムを作る必要があることが判明してこれの設計を行なう。
ビーグル犬(体重8~12kg)を用いて右開胸下に横隔神経を切断。長さ1cmの欠損を作製して同部を人工神経(PGA-C tube)で再建するモデルで神経再生を評価する。コントロールには神経電気刺戦装置によるペーシングを併用してデータの信頼度を高める予定である。
動物実験(ビーグル犬横隔神経再生モデル)を行なうための消耗品費(動物代、飼料代、手術用品、コラーゲン、PGA、繊維代、薬品代等)、研究打合わせのための旅費ならびに実験補助に対する謝金として使用する予定である。
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