研究課題/領域番号 |
23659671
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
李 千萬 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10432543)
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研究分担者 |
荏原 充宏 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10452393)
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キーワード | 温熱療法 / HVJ-E / ヒアルロン酸 |
研究概要 |
本研究は、温熱療法、免疫療法、抗癌剤療法を組み合わせた画期的な新規複合体による癌治療の開発を目的としている。当該年実施計画では、交流磁場発生装置による検討、HVJ-E局在と全身投与による有害事象の検討、マウスによる生体内分布の検討である。 本年度は、前年度に作製した不活化センダイウイルス粒子、ヒアルロン酸、磁性体粒子による温感複合体の精度を検討したが、作製過程で不活化センダイウイルス粒子が破壊する可能性があり、また、これまでの実験において磁性体粒子自身に、一定以上の濃度において細胞毒性が生じるため、まずヒアルロン酸と不活化センダイウイルス粒子との安定した結合を検討した。基質をキトサンからグリコールキトサンに変更し、グルコールキトサンとヒアルロン酸の濃度の条件検討を行い、それぞれ、0.25 mg/mL以上、0.5 mg/mL以上の濃度が必要であると判断した。さらに、pHの条件検討、作製過程での各Zeta電位の測定、TEM像の観察、ヒアルロン酸分解試験を行った。UV吸収測定により複合体上に高分子の結合が増加すること、ならびにHemagglutinating asssayにより不活化センダイウイルス粒子のニワトリ赤血球の凝集能が殆ど変らないことを確認した。以上より凝集しない不活化センダイウイルスと多層ヒアルロン酸の複合体の作製が可能であることを確認した(Nano-Decoration of the Hemagglutinating Virus of Japan Envelope Using a Layer-by Layer Assembly Technique. Langmuir 2013 in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の当該年度の研究計画では、交流磁場発生装置による抗癌剤の徐放率の検討、HVJ-E局在と全身投与による有害事象の検討ならびにマウスにおける生体内分布の検討を予定した。当該年度はセンダイウイルス粒子の免疫賦活化作用念頭に置き、センダイウイルス粒子の活性を維持する条件の検討を行った。各種条件を検討し、不活化センダイウイルス粒子の活性の一つである血球凝集作用を検討し、血球凝集作用に差がない、不活化センダイウイルス自身が凝集しない複合体つまり不活化センダイウイルスと多層ヒアルロン酸の複合体の作製が可能であることを確認した。交流磁場の発生による検討については、前年度に磁性体複合体の発熱を確認した。今年度は抗癌剤の徐放率、細胞における発熱と細胞障害性を検討する予定であったが、細胞や動物に用いる交流磁場発生装置用コイルのコストが非常に高価であり、また、実験における細胞に対する磁場の均一性に問題があるため、交流磁場発生による検討は行わなかった。発熱方法としては、近赤外光を用いてフタロシアニン色素を発熱させる方法を検討した。光源は一般的には700~800 nmの物を用いるが、ヘム鉄や水による光吸収が認められるため、1,100 nm、50 mWの半導体超発光ダイオードを用いることとした。本年度の達成度としては、精度の高い不活化センダイウイルスと多層ヒアルロン酸の複合体を完成させることができたが、in vivo実験等を行えなかったが、達成度としては。おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、用量依存的に細胞毒性の認められた磁性体粒子の代わりに、近赤外光に応答し発熱するフタロシアニン色素を本年度作製した不活化センダイウイルス粒子ヒアルロン酸複合体の不活化センダイウイルス粒子表面に反応させ、既に所有している1,100 nm帯50 mW出力光源を用いて発熱させ、その挙動を測定する。 また、不活化センダイウイルス粒子内部もしくは表面に抗癌剤を担持させ、その抗腫瘍効果を検討予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
フタロシアニン色素含有、ヒアルロン酸ー不活化センダイウイルス複合体の作製を作製し、発熱実験を行う。また、挙動などの物性を検討するために、フタロシアニン色素、不活化センダイウイルス、抗癌剤等の購入。フタロシアニン色素含有ーヒアルロン酸ー不活化センダイウイルス複合体の抗腫瘍効果を検討するための費用ならびに、学会発表ならびに論文掲載費を予定している。
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