研究課題/領域番号 |
23659672
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
佐野 俊二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50235438)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | バイオ人工心臓 / 心臓内幹細胞 / シート工学 |
研究概要 |
(背景)組織工学的手法を駆使した器官レベルでの心臓の形成は、これまでに多くの解決しがたい問題点が存在していた。局所的細胞輪や細胞シート工学などの研究により、これらの人工物の移植によって、機能不全に陥った心機能が改善することが報告されている。しかしながら、細胞シート工学の研究により、細胞間で有効な酸素交換を行いつつ、立体的な拍動性の心臓に密着させポンプ機能を補助するには、パッチの厚さに制限が生じ、約100ミクロンが限度といわれている。最近の報告では、これらの諸問題点を一気に解決できる革新的な技術として、脱細胞化した細胞外マトリックスで形成された足場に心血管細胞を再播種させ、実質細胞で再構築された人工心臓の作成が技術的に可能であることが示唆された。(目的)本研究では、ラット全心臓の脱細胞化による細胞外マトリックスで形成された足場の作成し、脱細胞化した心臓への人工ヒト心筋細胞及びヒト血管内皮細胞を再播種化させ、自家細胞由来バイオ人工心臓の機能解析及び移植検討を行う。(方法)麻酔下でラット心臓を摘出し、上行大動脈に潅流チューブを挿入、SDSならびに1%Triton-Xをそれぞれ心腔内及び冠動脈内に15分ずつ循環潅流させ、全心臓の脱細胞化を行う。脱細胞化した心臓の右房、上行大動脈にカニューレ挿入後、Radnoti社製のワーキングハートシステム用いて、370C、酸素化した潅流液内に5x107個の心臓内幹細胞と同数のヒト血管内皮細胞を注入し、細胞外マトリックスにヒト心血管細胞を再播種させる。(意義)機械的人工心臓及び脳死患者さんの提供心臓は、自家細胞で構成された臓器ではない。本研究が実用化されることで、臓器提供者不足や免疫抑制剤の使用による重要な諸問題点を解決できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
12週令のF344 Fisherラットを麻酔し、全身ヘパリン化後、正中切開にて上、下大静脈、肺動静脈、胸部大動脈を剥離切断し、全心臓を摘出する。ランゲンドルフ法によって、1.8mmのカニューレを上行大動脈通じて逆行性に心臓内に潅流させる。心筋保護目的で10Mアデノシン入りPBSを冠動脈内に平均80mmHgで15分間潅流させ、引き続き1%SDSそして1%Triton-Xをそれぞれ15分間持続潅流させる。最終工程として、抗生剤入りのPBSでその後120時間潅流させることで全心臓の脱細胞化に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
脱細胞化した細胞外マトリックスにヒト由来細胞を効率よく再播種させる条件として、より生理的な三次元培養環境として、充分な酸素化、心室ペーシングと適度な前後負荷を加えつつ細胞循環させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
心機能の生理学的評価法として、マイクロチップ圧カテーテル用いて心尖部を刺激しながら、左房、左心室圧を測定し、心電図も同時に記録する。再播種させたバイオ人工心臓をヌードラットの腹部大動脈に移植に生体内での機能評価も行う。
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