研究概要 |
重症心不全に対する治療法として、機械的人工心臓の埋め込みや脳死心臓移植が目下のところ主流の先端医療であるが、前者は高額な医療費による経済・財政的負担、後者は生涯通じての免疫抑制剤の投与や様々な副作用による多臓器障害が報告されている。自家細胞用いたバイオ人工心臓の作成により、これらの問題点は着実に解決されると予想されるため、本研究目的は、①ヒト心臓内幹細胞用いた人工ヒト心筋細胞作成法の樹立。②ラット全心臓の脱細胞化による細胞外マトリックスで形成された足場の作成。③脱細胞化した心臓への人工ヒト心筋細胞及びヒト血管内皮細胞の再播種化。④再構築した自家細胞由来バイオ人工心臓の機能解析及び移植検討。 脱細胞化した心臓は左房及び上行大動脈に18ゲージのカニューレを挿入し心尖部まで電気刺激リードを入れる。370C、5%CO2で酸素化された細胞培地を心房内流量20mL/min、冠動脈流量6mL/minで24時間心臓内に栄養を入れる。前・後負荷は圧センサー介してそれぞれ1-12mmHgと1-60mmHgに制御し、ペーシングリード用いて1Hz, 5-20V, 2msで周期的に心外膜側より刺激した。 細胞は5x107個の精製したヒト人工心筋細胞と5x107個のヒト心臓内幹細胞をmicroLのPBSに希釈し、27ゲージの針使用し5回に分けて左心室内に注入する。回路内を密閉後、約8から10日間持続潅流させることで三次元培養を行った。 これまでの研究実施期間中において、遺伝子組み変えをしていないヒト心臓内幹細胞を中心とした再播種潅流実験を主体に研究を進め、有効なヒト幹細胞の脱細胞化した細胞外マトリックスへの再播種に成功した。 今後、GATA4/Tbx5/Mef2cを遺伝子導入した人工成熟心筋細胞を大量に培養し、より作業能が高い左室心筋の三次元レベルでの再構築を目指していく。
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