研究課題/領域番号 |
23659674
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
藤井 義敬 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40156831)
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研究分担者 |
佐々木 秀文 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00336695)
矢野 智紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40315883)
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キーワード | RET / KIF5B/RET / NRF2 / 肺癌 |
研究概要 |
肺癌におけるEGFR遺伝子のチロシンキナーゼ内変異は、EGFRを分子標的とする薬剤感受性因子としての役割が明確となっている。このため世界中の様々な研究室でチロシンキナーゼに関する遺伝子変異の研究が行われている。肺癌において、特に腺癌においてBRAF遺伝子変異も数%報告されているが、この変異を特異的に阻害する薬剤がメラノーマなどで試されはじめている。我々はすでに、日本人肺癌検体におけるBRAF遺伝子変異について報告を行ってきたが、新たな手法として、BRAF遺伝子変異について特異的に認識する抗体を用い、免疫染色を行い検索を行っている。まずBRAF遺伝子変異をシーケンスでスクリーニングする過程で新規変異を同定した。一方、あまりドライバー変異が明らかになっていない扁平上皮癌において、体細胞変異が指摘されたNRF2遺伝子変異について、real-time assayを用いた変異解析、定量解析を進めている。さらにNRF2の遺伝子多型についてもタックマンプローブを用いて解析した。この遺伝子多型は、肺癌手術時の一秒量など、閉塞性障害との相関が示された。最近明らかになった肺腺癌におけるRET遺伝子の転座についてもFISH(Sasaki et al. Cancer Medicine2012)や免疫染色などで検討を行っている。この遺伝子異常は肺腺癌で生じるが排他的に存在するため個別化治療が重要である。RET周辺遺伝子異常を検索し臨床病理学的因子との相関や新規分子標的治療の可能性を明らかにする試みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
扁平上皮肺癌患者組織におけるNRF2遺伝子のsomatic mutationやpolymorphismをシークエンスまたは我々が確立したTaqManやLightCycler(Sasaki et al.Clin Cancer Res 2005)等real-timePCRの系でconfirmし検索し、これらが臨床病理学的因子や他の分子発現とどう結びついているかを検討を行った。臨床病理学的因子との相関は既に我々が以前報告した通りで予後、喫煙、性別(男性)との相関がコンファームされた。しかしながら新しい知見は得られなかった。またBRAF遺伝子については特異的に同定可能な抗体を用いて免疫染色を行い、関連性を検討を行っている。BRAF変異の割合が少なく、検討に難渋しているが、結果は出始めており、今年度中に結果を報告したい。最近膵臓癌でも報告がなされている、RET遺伝子のG691S遺伝子多型についても検討を行っている。Taq Man probeを用いて、PCPベースの方法で検出する方法は確立したので、症例を蓄積し、肺癌の多くの症例を検討して臨床病理学的背景との相関を明らかにする。RETの遺伝子増幅については定量的PCR法を用いてコピー数の検索を行っているが、今のところ臨床病理学的因子との相関は明らかになっていない。。
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今後の研究の推進方策 |
約300例以上の臨床検体におけるEGFRやBraf遺伝子のなどの変異、多型、増幅検索、genotypingを完了ののち、同じ検体のパラフィンブロック検体を用いて、BRAF遺伝子変異特異的な免疫染色を行っている。現在さまざまな条件で検討を行っているが、ほぼ確立されたので,bestのものを選択する。さらに多くの臨床検体の組織学的検討を進めていき、学会報告や論文化を検討している。シーケンスや多型の解析も新たな症例で蓄積していきたい。NRF2遺伝子多型については、肺癌そのものの臨床病理学的因子との相関はないものの肺活量や一秒量との相関が示唆されるので、これを症例を蓄積して検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ハイブリプローブでの検証のため、新たにプローブの購入を行う。またreal-time PCR機器のメインテナンスが必要であり、費用を要する。同様にreal time PCR法を用いて、RETおよびNRF2などの遺伝子増幅、コピー数の検討を行うため、キアゲン社のキット(QuantiTect SYBR Green PCR kit)を購入する。RET遺伝子増幅については,既に確立された方法にのっとり、パラフィン切片から、FISHを用いて施行していくため、FISHプローブを購入予定である。細胞株を購入して新たな、分子標的治療の可能性をさぐる。RET遺伝子異常にはvandetanib, sunitinib,sorafenibが有用な可能性があるので、細胞株にKIF5B-RET遺伝子変異を組み込んだり、過剰発現を起こしたのちに、分子標的治療剤を用い、MTTアッセイなどで、有用性を検討する。耐性遺伝子変異株が見つかれば、さらに購入してRET阻害剤や他剤による耐性克服の検討も同様の手法で行う。
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