研究課題
我々が開発中のバイオバルブ人工弁組織体は、動物体内をリアクターとして、高分子製鋳型を皮下に1~2ヶ月埋入することで自動的に形成される自己組織体である。これまでラットや兎において組織体が作製できることを確認してきたが、山羊や牛など大動物においては未だ行っておらず、今回、これら大動物における組織体の形成能を調べた。(1) 大動物皮下でのBiovalve埋入期間と組織体の形成能の評価実験方法:成ヤギを麻酔下、手術的にバイオバルブ作製用鋳型を複数個皮下に埋入した。1-2ヶ月後に周囲に形成された皮下組織体と共に作製用鋳型を取り出し、組織、力学的性質、機能性を評価し,埋入期間と組織体の形成能の関係を調べた。その結果、成ヤギにおいても皮下埋入後6-8週間で、3枚の弁葉とバルサルバ洞を持つ生体の大動脈根部と形態上非常に酷似した組織体が形成されることが確認できたが、形成が完了する期間に個体差があることもわかった。したがって、確実に組織体が形成される時期を把握するため、作製用鋳型にカプセル内視鏡を組み込んだ物を考案した。これにより皮下組織内での組織体形成過程の連続的な観察が可能になり、確実で安定した組織体の採取が可能になった。採取した組織体の組織学的性状を組織染色(HE,エラスチカファンギソン,マッソントリクロム,αSMA染色)で観察したところ、厚さ約200 umの膠原線維と線維芽細胞を主とする組織で形成されていることが確認された。採取したバイオバルブ人工弁組織体の力学的性質をモック回路を用いた模擬体循環回路にて検討したところ、体循環に近い循環動態(血圧、流量、心拍数等)にて、十分な耐用性を有していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画は、開発中のバイオバルブ人工弁組織体の大動物における組織体の形成能を調べることであり、研究実績の概要で述べたように、成ヤギにおいて組織体が形成されることが確認でき、組織学的、力学的性質の検討により、バイオバルブ人工弁組織体が移植グラフトとしての基本性能を有していることが明らかになったことより、本年度の研究の目的を完全に達成し得た。
次年度は、本年度に採取したバイオバルブ人工弁組織体をグラフトとして、生体の体循環系に移植して、その性能を評価する。可能であれば、現在臨床で応用が開始されている経管的大動脈弁移植術(TAVI)への応用を検討する。
本年度に、採取したバイオバルブ人工弁組織体を体循環系に移植するところまで進んだ場合の予算を計上していたが、次年度に施行することになったため、その実験に使用する費用を次年度に繰り越し手使用する予定である。次年度に施行する、バイオバルブ人工弁組織体を生体の体循環系に移植する実験では、動物の購入や、実験に使用する人工血管などの消耗品、慢性実験における抗生剤や点滴および循環動態をモニタリングするためのコード類などに研究費を使用する必要がある。また、本研究の内容は革新的で有り、その成果を国内外に広く発表する目的での学会参加出張旅費が必要である。
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