研究課題
我々が開発中のバイオバルブ人工弁組織体は、動物体内をリアクターとして、高分子製鋳型を皮下に1~2ヶ月埋入することで自動的に形成される自己組織体である。これまでラットや兎において組織体が作製できることを確認し、前年度の研究では、山羊や牛など大動物においても、皮下で組織体の形成が可能であることが示された。今年度は、皮下より採取したバイオバルブ人工弁組織体をグラフトとして、生体の体循環系に移植して、その性能を評価した。また、現在臨床で使用され始めている経管的大動脈弁移植術(TAVI)への応用として、ステント付きバイオバルブの設計を行った。方法は、アクリル製のBiovalve鋳型を成ヤギ背部の皮下に埋入して8週間後摘出した。鋳型を抜去して3つの薄い弁葉とValsalva洞状形態を持つConduit型のBiovalveが得られ、これを人工血管に組み込んだグラフトを用いて手術的に左心バイパス(Apico-aortic bypass)を作成し、動脈圧負荷がかかる状態で慢性的に性能を評価した。その結果、術後、血管造影および経胸壁エコーにてバイパスグラフトの血流は良好でBiovalve弁葉の可動性も良く、顕著な狭窄や逆流もなく経過した。最長8週目で犠死後観察したところ、弁葉自体の構造は保たれていた。組織学的には結合組織の中に細胞侵入が見られ、新生血管の構築も見られた。血液接触面には一部内皮様の細胞も見られた。したがって、本研究により、皮下を組繊構築の場にして作製した自家組織心臓弁が、高圧系でも自己弁に近い性能を持って機能し得ることが示され、小児や成人の大動脈弁置換や大動脈根部置換などに対して将来有望な移植グラフとなることが期待される。ステント付きバイオバルブについては、バルーン拡張型と自己拡張型の2種類のステントを設計作製し、バイオバルブと組み合わせるための鋳型を作製した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画は、皮下より採取したバイオバルブ人工弁組織体をグラフトとして、生体の体循環系に移植して、その性能を評価することであり、研究実績の概要で述べたように、皮下を組繊構築の場にして作製した自家組織心臓弁が、高圧系でも自己弁に近い性能を持って機能し得ることが示された。また、現在臨床で応用が開始されている経管的大動脈弁移植術(TAVI)への応用としてステント付きバイオバルブの設計まで行うことが出来た。以上より、本年度の研究の目的を完全に達成し得た。
次年度は、バイオバルブ人工弁組織体をグラフトとして生体の体循環系に移植して、その性能を評価する実験をさらに行い、より長期間でバイオバルブ人工弁組織体が生体で機能するかどうかを評価する。可能であれば、現在臨床で応用が開始されている経管的大動脈弁移植術(TAVI)への応用として設計したをステント付きバイオバルブの鋳型を生体内に埋入し、組織体が設計通り形成されるか確認する。
次年度に施行する、バイオバルブ人工弁組織体を生体の体循環系に移植する実験では、動物の購入や、実験に使用する人工血管などの消耗品、慢性実験における抗生剤や点滴および循環動態をモニタリングするためのコード類などに研究費を使用する必要がある。また、本研究の内容は革新的で有り、今年度に得られた成果を来年度に国内外に広く発表するために来年度に学会参加出張旅費が必要である。したがって、今年度の研究費の一部を、次年度に使用する予定である。
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