研究課題/領域番号 |
23659678
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中山 若樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (40421961)
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研究分担者 |
森脇 拓也 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (30597464)
寳金 清博 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90229146)
黒田 敏 富山大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10301904)
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キーワード | 脳動脈瘤 / 破裂 / 内皮 / 炎症 / 走査電子顕微鏡 / 免疫染色 / computed flow dynamics / 動物モデル |
研究概要 |
これまで、臨床例における脳動脈瘤クリッピング術後の動脈瘤組織標本を計54個(破裂例40個、未破裂例14個)を取得できた。これらの全例に対して、ヘマトキシリン・エオジン染色と、エラスティカ・マッソン染色による評価を終えたところ、破裂脳動脈瘤に特徴的な所見として、<1> 動脈瘤内皮下のフィブリン析出、<2> 内膜内への炎症細胞の浸潤(これはリンパ球を主体とする部位と好中球を主体とする部位とがあり、時相の異なる炎症が存在することが示唆される)、<3> 内壁表面における層状の血栓形成などが見られた。これらの所見は、破裂動脈瘤においては破裂点近傍はもちろんのこと、そこからやや離れた部位にも高率にみられたものの、未破裂動脈瘤ではほとんど認められなかった。 一方で、内皮細胞の存否やその状態も重要な検討項目の一つである。まだ一部の症例での結果だがCD34による内皮細胞をすると、部位による差はあれど、動脈瘤内壁にも機能が低下しながらも内皮細胞は存在しているようである。また、上記53例のうち7例(破裂例5例、未破裂例2例)では内壁の走査電子顕微鏡による評価をすすめているが、内皮はやはり存在はしており、ただし形態や配列が乱れていたり、完全に損失していたりすると推察される。 これらの所見から鑑みると、動脈瘤の破裂は単に力学的な負荷のみで破裂をきたすわけではなく、また慢性炎症のみで説明できるものでもなさそうである。力学的要素に影響を受けた何らかの内皮障害に端を発し、その修復過程としての内壁の血栓形成あるいは壁内出血そしてそれに対する急激な炎症反応が、やがては壁の崩壊をきたすことで破裂するのかもしれない。このことの確証を得るべく、実験動物での易破裂大型動脈瘤モデルの確立と、ヒト臨床例における動脈瘤癖部位ごとのCFD血行力学解析を今も進めているところである。
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