てんかん発生に関わる神経ネットワークの空間的広がりと大きさを描出する新しい技術について基礎的知見を得ることを目標に研究を行った。 並行して行なっていた研究によって、より優れた海馬のてんかん発作モデルの創出にいたったため、そのモデルを使用して研究を進めた。光感受性遺伝子(チャネルロドプシン2)を導入した遺伝子改変ラットの海馬に、光ファイバーを介して間欠的な光刺激を与えることで高効率にてんかん発作を誘発できる。このてんかん発作モデルを用いて、てんかん発生に関わる神経ネットワークの解析を行った。 ①光刺激誘発発作の脳波解析: 間欠的な光刺激によって海馬に誘発されるてんかん発作を、多点脳波によって記録した。数理解析(Granger causality analysis)を応用し、海馬の長軸方向への情報の流れ(information flow)が発作の生成に重要であることを明らかにした。つまり、てんかん発作開始時にはseptalからtemporal hippocampusへのcausalityが増すが、発作の終末に向けて同期性の増加とともに情報の流れが逆転することがわかった。この結果は、PLoS ONEに原著論文として発表した。 ②Mn増強MRIによる賦活域の検討: Mnが電位依存性Caチャネルによって神経細胞に取り込まれる特性を利用して、神経活動の賦活域を空間的に画像化する方法を用い、研究①で用いた海馬誘発てんかん発作モデルにおける賦活領域を計測した。視察的な画像評価において、刺激と反対側の海馬、同側の新皮質におよぶ広い範囲の賦活が確認できた。画像の統計学的処理を進め、てんかん発作活動の空間的なネットワークを定量的に評価する予定である。
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