研究概要 |
妊娠ウイスターラットの腹腔内にethylnitrosourea (ENU)を投与して得られたENU誘導グリオーマラット(妊娠18日目に75mg/gの高容量を投与することで、生後90日程度高率にgrade IIグリオーマを発症し、その後180日までに、grade III、IVへと悪性転化するとされている (Sareddy GR et al., Neurochem Res 34: 1278-88, 2009)に、生後90日の時点で定位脳手術装置で、Bregmaから頭側に0.8mm、右外側に1.3mm、深さが3mmの位置に、Plastic ONE社製の浸透圧ポンプ用シングルかニューラを留置して、p53非依存性に細胞周期を呈しさせるとされている化合部の投与を行い、その効果と安全性の評価を行った。評価は生後135日(処置後45日)に、脳を採取固定し、プレパラートを作成し、HE染色で腫瘍部分を確認、腫瘍部分が確認できた物は、WHOの規定に従って、gradeを判定すると共に、それに対応する連続切片を、抗Ki-67抗体(MIB-1)で染色し、MIB-1 labeling indexを計測し、その平均値を算出した。平成25年度は化合物として残りのProdigiosin,、dactylone、Prostaglandin A1 analog(研究者がin vitroで効果を確認した化合物)の有効性を判定した。残念ながら、これらの化合物もコントロール群と比較して有意な効果は示さなかった。一方、最近グリオーマ細胞の浸潤に関して、反発因子の存在が想定されているが、ラットグリオーマ細胞株C6コラーゲンゲル内3次元クリオーマ細胞浸潤モデルを用いて、その反発因子に関する研究も施行した。培養系を低酸素状態にすることで浸潤の速度が速くなったことから、酸素の供給が反発因子の産生に影響を与えていると考えられた。また、反発因子は中心細胞塊において産生されていると考えられるが、その中心細胞塊を除去して後でも浸潤を開始した細胞群は同方向への浸潤を継続した。このことから、反発因子による作用は一旦惹起されると、周辺環境の物理化学的変化などがない限り続くと考えられた。
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