研究課題/領域番号 |
23659703
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 大介 北海道大学, 大学病院, 助教 (90528845)
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研究分担者 |
岩崎 倫政 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322803)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Syndecan-4 / 関節リウマチ |
研究概要 |
関節リウマチ(RA)におけるSyndecan-4 (Syn4)の機能解析に関してこれまで研究を進めてきた。Syn4は種々の炎症反応において非常に重要なメディエーターであると考えられ、最近の報告からはSyn4が生体内での免疫応答をダイナミックに制御することで関節破壊に寄与することが示唆された。現在のRAに対する生物学的製剤は、患者のQOLを著しく改善したが日和見感染や治療抵抗性など多くの問題が残っており、今後は作用機序の異なる治療効果の高い薬剤の開発が求められる。本研究ではRAの病態におけるSyn4の関与を明らかにすることを目的とした。 野生型 (WT)マウスとSyn4-/- (Syn4 KO)マウスを用いて、T,B細胞依存型の関節炎モデル:collagen-induced arthritis (CIA)、T細胞依存型の関節炎モデル:antigen-induced arthritis (AIA)、及びT細胞非依存型の関節炎モデル:collagen antibodies-induced arthritis (CAIA)の3つのモデルを用いて検討した。免疫細胞のSyn4の発現はフローサイトメトリー (FACS)で解析し、所属リンパ節の組織学的評価は免疫染色で、血清抗体価はELISAで測定した。 現在までの本研究においては、Syn4がRAのみならず、T細胞依存的な疾患に共通したメカニズムで抗体産生を制御することで、病態形成に非常に強く関与している可能性が示唆された。以前よりB細胞がRAの病態の中心的な役割を担っていることは知られており、RA治療の明確なターゲットとなっている。今後はさらにT細胞-B細胞相互作用の観点からSyn4が果たす機能を明らかにすることで、作用機序の異なる新規薬剤の開発につなげたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予想していた結果よりも充実した内容のデータが得られている。特に関節リウマチのマウスモデル(CIA)で得られた表現型は、Syn4がB細胞上に高発現し、リンパ節での胚中心形成を促進させることで抗体産生を促し、病態を悪化させている可能性を示唆する結果であったが、異なる抗原(NP-KLH)で免疫をした脾臓においても同様の結果が得られている。 このことが示すものは、自己免疫性疾患のみならず、T細胞依存的な炎症疾患に共通してみられるメカニズムにSyn4が関与しており、抗体産生に関わる重要な分子の一つとして新たにSyn4が加わる可能性を示している。 明らかな表現型が得られたことには満足しており、今後のメカニズムの解析が重要になってくるため達成度に関しては半分といった印象であるが、方向性がはっきりしてきたために今後に期待ができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究に関しては、Syn4のメカニズムの解析を中心とする。B細胞を中心に抗体産生に関わる細胞表面マーカーの表現型の違いを蛍光標識の抗体を使用してFACSで解析すること、B細胞の遊走能の評価をケモタキシスチャンバーとケモカインのリコンビナント蛋白を使用して行い、B細胞の抗原提示機能の評価をT細胞との共培養によって行うことなど予定している。 また別の免疫源(TNP-KLH)での反応をin vivo実験でも行う予定である。(具体的にはTNP特異的な血清抗体価測定、脾臓・所属リンパ節の組織学的評価など)
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に以下のように使用する予定である。(1)血清抗体価測定kit購入費・・・抗体産生能の比較・B細胞機能評価、(2)蛍光抗体購入費・・・脾臓・所属リンパ節の組織学的評価、(3)リコンビナント蛋白購入費・・・B細胞のケモカインに対する遊走能の比較検討、(4)マウス免疫試薬購入費・・・数種類の免疫源に対する抗原・抗体反応の評価。(5)マウス購入費 ●未使用額161,762円は、平成24年3月に購入したマウス一式23,226円、薬品138,536円が4月以降の支払いになったためである。
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