前年度は、生理的な圧を負荷すると軟骨細胞の特性が保持され、さらに過度の圧を負荷すると肥大分化・変性が生じるという現象がどのような細胞内変化を介しているのかを探索すべく、静水圧負荷による軟骨細胞の肥大分化を誘導する系の検討をマウス軟骨前駆細胞株や初代軟骨細胞などで重ね、負荷圧や負荷後の培養時間、サンプルの回収時期などについての条件検討を行い、20MPaで30分の圧負荷が軟骨細胞の肥大分化マーカーである基質分解酵素MMP13の発現量を上げることを突き止めた。本年度は前年度に続き、マウスの関節軟骨細胞、ヒトの軟骨細胞株などにて同様に条件検討を行った。その結果、前年度の検討とは異なり、やや低い圧で細胞が反応し、肥大分化マーカーの発現上昇が見られる系を見つけた。現在得られたサンプルをマイクロアレイでの解析に持ち込み、解析中である。この圧負荷による培養軟骨細胞の肥大化・変性誘導系が実現すれば、変形性関節症への関与が示唆される遺伝子に関して、これまでノックアウトマウスなどの作成を介して解析してきたことを、細胞レベルで容易に解析できることから、変形性関節症をより生理的・直接的に研究することが可能となると考えられる。
|