研究課題/領域番号 |
23659706
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川口 浩 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40282660)
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研究分担者 |
原 慶宏 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00422296)
小野 貴司 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00506248)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 椎間板変性 |
研究概要 |
本研究は変形性脊椎症の病態の解明を目的として、(1)椎間板特異的creマウスの作成を念頭においた脊椎・椎間板特異的マーカー遺伝子の探索、と(2)椎間板変性モデルマウスの確立、という2点を中心的な目標にかかげて申請し、研究に着手した。(1)については、マイクロアレイベースにて候補遺伝子を探索しているが、今のところ候補遺伝子をしぼりきれていない状況である。具体的にはマウスの椎間板において顕微鏡下に線維輪・髄核・軟骨終板を高純度にとりわけることまで成功しており、これらの組織を関節軟骨を比較対象としてマイクロアレイに提出したところまで進捗している。今後、椎間板とりわけ線維輪・髄核特異的マーカーとなりうる候補遺伝子のしぼりこみを行っていき、それらの候補遺伝子の詳細な発現パターンを解析していく予定である。(2)については腰椎の椎間板穿刺による変性モデルや腰椎の椎関関節切除術モデルなどさまざまなマウスモデルの試行錯誤を重ねた結果、腰椎の椎関関節切除により、術後8週にて高率に椎間板変性が惹起できることを見いだした。現在は手術手技の再現性を高め、また変性の程度を均一化すべくマウス手術手技を洗練しているところである。また本術式にて得られた変性椎間板の組織切片にて変性椎間板にて線維輪細胞の肥大化が生じることを見いだし、さらに肥大化した線維輪細胞においてCol10遺伝子の発現の上昇がみられることもつきとめた。椎間関節切除術による椎間板変性モデルはこれまでに報告のない新規モデルであり、本モデルはより人間の変性の病態に近いものであることから本モデルにより、新たな多くの知見が今後得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述したように本研究は、(1)椎間板特異的creマウスの作成を念頭においた脊椎・椎間板特異的マーカー遺伝子の探索、と(2)椎間板変性モデルマウスの確立、という2点を中心的な目標にかかげて申請し、研究に着手した。(1)については当初、顕微鏡下にマウスの髄核や線維輪をよりわけるという微小作業に苦心し、純度の高い良質なサンプリングをするまでに時間を要したが、現在までにマイクロアレイに髄核・線維輪・軟骨終板・関節軟骨のRNAを提出し、特異的椎間板マーカーたりうる候補遺伝子のしぼりこみを行う準備が整ったところであり、順調に経過していると考えている。(2)については上述のとおり、既報告のものを含め様々なマウス椎間板変性モデルの作成を試みた結果、これまでに報告のない新規のそしてより人間の病態に近い椎間関節切除による椎間板変性モデルの作成に成功した。本モデルにて上記のような変性線維輪細胞における新たな知見も得られ、今後は手術手技の洗練によってより再現性を高めていくような段階であることからこちらも当初の予定通りに順調に進捗していると考えられる。以上、目標に掲げた2点についていずれも順調に推移していると考えられ、全体として本研究は概ね順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は今後の世界の椎間板変性に関する研究を前進させるために、(1)椎間板(髄核・線維輪各々の)特異的マーカーとなりうる遺伝子を同定し、椎間板特異的creマウスを作成すること、(2)マウス椎間板変性モデルを確立すること、を目指して研究を遂行しているため、これらの目的を達成できるようにH24年度の研究を推進していく。具体的には(1)については前述のとおり、提出したマイクロアレイの結果で得られた各マーカー候補遺伝子に対して、in-situ hybridization, 免疫組織染色法を行っていき、発現の組織特異性を見ていくことでマーカー候補遺伝子を絞り込んでいく予定である。マーカー遺伝子のしぼりこみ後、knock-in creマウスを作成すべくその遺伝子の3'UTRにIRES配列に続いてcre遺伝子を組み込んだtarget vectorを作成し、今後のcreマウス作成につなげていく予定である。また(2)については今後、椎間関節切除による椎間板変性モデルを確立された系とすべく、手術手技の洗練をかさね再現性の高いマウスモデルへと昇華させていく予定である。また本モデルにて得られた変性椎間板の組織切片にて発現解析なども続けて行っていき、椎間板変性の分子生物学的機序も研究していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、本研究ではマウス変形性脊椎症モデルの手技の確立のために手術用のマウスを購入する必要があり、80万円以上必要と見込まれる。また脊椎・椎間板特異的なマーカーのスクリーニング・絞り込みのための発現確認のためにin-situ hybridization・免疫組織染色を大量に行う予定であり、抗体費用など50万円以上必要と見込んでいる。また脊椎・椎間板特異的なマーカー遺伝子のcreトランスジェニックマウス作成およびfloxマウス作成用のtargeting vectorの作成にあたり、BACクローン、その他必要なvector、PCR用酵素(KOD plus, TOYOBO)、制限酵素類の修飾酵素(TAKARA, Rocheなど)の購入に40万円程度必要な見込みである。その他mRNA 精製キット(RNeasy Kit, QIAGEN)、リポフェクション用試薬(FuGene6, Roche)、および細胞培養や大腸菌培養に用いる培地、培養液、各種消耗品などが相当量必要と見込まれる。成果発表としては、国内では日本整形外科学会基礎学術集会、日本骨代謝学会、日本軟骨代謝学会の3 学会、外国ではAmerican Society for Bone and Mineral Research (ASBMR), OsteoarthritisResearch Society International (OARSI)の2 学会の学術集会での発表を予定している。
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