成熟した破骨細胞が培養ディッシュ上で形成する podosome belt と呼ばれるアクチンの環状構造はリセドロネート投与によって破断した。成熟した破骨細胞の微小管は、中心から細胞周辺に向かう放射状構造と細胞周辺の環状構造からなり、核の多くは細胞周囲に存在する。リセドロネート投与によってこうした規則的な微小管構造が失われた。安定化した微小管を反映するアセチル化チューブリンは、リセドロネート投与によって生じる Akt の活性低下と時間経過を同じくしてその発現が低下した。アデノウイルスを用いて CA-Akt1 を導入した破骨細胞では、アセチル化チューブリンの発現が増加した。Akt の基質の一つである GSK-3β は微小管動態を制御する主要なシグナル経路として知られている。GSK-3β は微小管結合蛋白の微小管結合能を制御することにより微小管動態に関与する。培養ディッシュ上に接着した細胞を界面活性剤である 0.2% Triton X – 100 で処理すると、ほとんどの細胞質に局在しているタンパク質および大部分の細胞膜のタンパク質が除去され、細胞骨格のみが抽出され、triton cytoskeleton と呼ばれる。Triton cytoskeleton 抽出により微小管分画における代表的な微小管結合蛋白の発現を、CA-Akt1 導入破骨細胞とコントロール破骨細胞とで比較した。CA-Akt1導入破骨細胞の triton cytoskeleton において EB1 (end binding 1)、 APC、およびモーター蛋白であるダイニンを活性化する蛋白質複合体の主要な構成成分である p150 Glued の発現が増加しており、これら微小管結合蛋白の微小管結合が増加していると考えられた。
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