研究概要 |
本研究では、軟骨肉腫において重要な役割を果たしている基質分解関連因子と、軟骨細胞において重要な役割を果たしている転写因子C/EBPβとの関係を検討しC/EBPβ制御により軟骨肉腫を制御するための基礎的データを得ることを目的とし、以下のサブテーマについて検討を進めた。 1.軟骨肉腫症例における臨床像とC/EBPβおよび基質分解関連因子の発現との相関の検討 軟骨肉腫症例材料からの腫瘍組織を用いてC/EBPβ及び基質分解関連因子の発現レベルを評価した。概してC/EBPβ陽性の軟骨肉腫組織においてMMPファミリーの一部の因子の発現が高い傾向にあった。C/EBPβおよび基質分解関連因子の発現レベルと臨床像との相関についても検討を行ったが、有意な相関を示した因子は得られなかった。 2.C/EBPβ発現レベルと局所浸潤能の相関の検討 軟骨肉腫症例の組織を用いて独自の細胞株の樹立を行った。さらに、市販の軟骨肉腫由来細胞株を用いてC/EBPβ強制発現および発現抑制軟骨肉腫細胞株を樹立した。強制発現細胞株では、増殖能は抑制されたもののMMP3, MMP13,ADAMTS5などの基質分解酵素の有意な発現上昇を認めた。逆に発現抑制細胞株では増殖能および前述因子の発現量に逆の傾向を認めた。 3.C/EBPβ発現レベルと生体内における軟骨肉腫局所浸潤能・転移能との相関の検討 樹立した軟骨肉腫細胞株およびSWI353細胞株をヌードマウス皮下軟部組織に移植した。移植後最長6か月程度観察することができたが、移植箇所において触知可能な腫瘍形成をするには至らず、剖検にても明らかな腫瘍形成は認めなかった。NOD-SCID, NSGなどより重度の免疫不全マウスによるxenograft modelを用いて浸潤能・転移能について検討する必要があるものと思われた。
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