研究課題
本研究の目的は、人工関節の深刻な合併症である感染の阻止を目指し、細胞・タンパク質の吸着を制御する生体適合性ポリマーで金属表面を処理する技術を確立し、「細菌の接着・バイオフィルム形成を阻害する抗菌性金属表面」を創出することである。以下の検討を行った。1.金属表面の至適MPCポリマー処理方法・条件の検索Graft from法等の処理方法、および処理時間等の処理条件を変化させ、チタン合金表面の至適プロセスを検索した。得られた試料表面について、X線光電子分光分析、フーリエ変換赤外分光分析、水による接触角測定等を行い、至適処理条件を確立した。2.MPCポリマー処理金属表面の抗菌作用の検討1)タンパク質吸着抑制の検討:MPCポリマー処理を施したチタン合金表面のタンパク質吸着抑制を評価するため、アルブミン、フィブリノーゲン等の血清タンパク質をチタン合金表面に吸着させた。そして、タンパク質のペプチド結合に反応させた銅イオンをビシンコニン酸に反応させ、その吸収ピークを分光光度計により測定し、チタン合金表面へのタンパク質吸着量を計測した。また、表面の親水性、表面電荷を、接触角測定、ゼータ電位測定により計測した。2)細菌の接着・バイオフィルム形成の検討:人工関節感染の代表的な起因菌である、黄色ブドウ球菌を用いて検討した。チタン合金製のdisc表面に上記1.で確立した方法でMPCポリマー処理を行った。試験片表面に、細菌を播種し、静置培養を行った後、試験片を回収し、その表面ついて、付着生菌数測定、蛍光顕微鏡観察、SEM観察等を行い、MPCポリマー処理によりチタン合金表面への最近の付着が顕著に抑制されることを明らかにした。以上の結果により、「細菌の接着・バイオフィルム形成を阻害する抗菌性金属表面」を創出することができた、今後は本研究成果の実用化へ向けた検討を推進する予定である。
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