研究課題
骨芽細胞から骨細胞への分化におけるエピゲノム修飾変化ならびにその制御因子を同定することができれば、新たな骨粗鬆症疾患病態を紐解くことが可能になり、様々な新規治療技術への応用が期待できると考え、本研究の着想に至った。骨芽細胞から骨細胞への分化過程の詳細は全く不明であり、一般的な培養細胞を用いた分化系では骨芽細胞から骨細胞への分化は認められない。そこで、骨芽細胞系細胞株MC3T3E1細胞を分化培地(アスコルビン酸、βグリセロリン酸含有)にて3週間の培養を行い、経時的に細胞を回収した。まずRNAを抽出し骨芽細胞および骨細胞マーカー遺伝子の発現を定量的RT-PCR法にて評価した。同時に、各遺伝子の転写開始点(TSS)近傍のヒストン修飾変動を観察するため、代表的転写活性化および不活性化修飾であるH3K4me3およびH3K27me3のクロマチン免疫沈降反応(ChIP)を行った。その結果、RT-PCRで転写亢進が確認された骨芽細胞マーカー遺伝子のTSSでは、H3K4me3のみが上昇しているのに対し、3週間の培養でも転写亢進が認められなかった骨細胞マーカー遺伝子のTSSでは、H3K4me3およびH3K27me3の両方の修飾が亢進しているbivalentな状態であった。このことから、骨芽細胞から骨細胞への分化には、転写不活性化を制御するH3K27me3修飾の脱メチル化が必須であると考えられた。H3K27の脱メチル化酵素としてJmjd3およびUtxが同定されている。我々は、このうち、骨粗鬆症患者数には性差があることから、X染色体上に座位するUtxに着目し、現在、floxマウスを作出中である。今後、骨(芽)細胞特異的Utx遺伝子欠損マウスを作出、解析する事で、骨細胞分化におけるエピゲノム制御機構の意義が明らかとなり、新たな骨形成促進薬開発へと繋がることが期待される。
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