研究課題/領域番号 |
23659714
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森田 定雄 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (20202426)
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研究分担者 |
麻生 義則 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 寄付講座教員 (50345279)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 酸化ストレス / 活性酸素 |
研究概要 |
世界一の高齢化社会を抱える我が国では、骨粗鬆症患者数は激増しており、骨代謝の全容把握と骨粗鬆症の治療法開発は急務である。活性酸素は生体に非特異的な損傷をもたらす単なる毒性因子ではなく、巧妙に制御されたシグナル伝達機構の担い手であるというコンセプトが広く認識されつつある。生体内の活性酸素シグナル解明は未だ不明な点が多く、とくに骨代謝に対する酸化ストレスの影響は解明されていない。そこで本研究では、骨代謝における活性酸素シグナルの全容を明らかにし、酸化ストレスの骨代謝への影響を分子生物学的に解明することで、骨粗鬆症治療に繋げることを目的としている。本年度は、活性酸素の代謝に関わる重要な遺伝子を、骨組織特異的に欠損させたマウス(コンディショナルノックアウトマウス)を作成した。コンディショナルノックアウトマウスは野生型マウスと比較して耳介の低形成が認められた。また、出生直後では野生型マウスとの差は認められないが、出生後10日目から体重の低下が確認された。さらにin vitroにおいて、骨芽細胞様細胞株(MC3T3-E1)でsiRNAを用いて本遺伝子をノックダウンすると、骨芽細胞の分化マーカーであるALP活性およびmRNA発現の低下が認められたことから、骨芽細胞分化に対して促進的に働く可能性が考えられた。一方、in vitroでM-CSF、RANKLにより誘導される破骨細胞分化の過程において、本遺伝子は分化後期で発現が減少する事が明らかとなった。現在、組織学的骨形態計測法によりコンディショナルノックアウトマウスの骨の表現型を解析中であるとともに、in vitroにおいて骨芽細胞および破骨細胞分化に関わるシグナル伝達への影響を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンディショナルノックアウトマウスの作製、解析および、in vitroの実験に関して、当初の計画通り概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1.破骨細胞の分化における活性酸素シグナルの意義の解明2.骨代謝における抗酸化酵素の意義の解明異常の認められたマウスにおいて大腿骨よりRNAを採取し、マイクロアレイによる網羅的解析を行う。すでに申請者らは、さまざまな細胞、組織において網羅的解析を行い、十分な経験を有している。これら一連の検討により標的として同定された候補遺伝子を過剰発現あるいはノックダウンするアデノウィルス、レンチウィルスを作成し培養骨芽細胞、破骨細胞に感染させ、分化、増殖に与える影響を定量する。これらの検討で抗酸化酵素の標的候補遺伝子の骨代謝における生理的意義を明らかにする。3.神経系による骨代謝調節における活性酸素シグナルの意義の解明レプチン、ニューロメジンU欠損マウスに加えて、交感神経β2受容体欠損マウス、ドーパミンβ水酸化酵素欠損マウスを用いて、神経系、活性酸素シグナルについても検討を進める。この検討により、神経系による骨代謝調節の分子機構、活性酸素シグナルとの関連について理解を深める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、コンディショナルノックアウトマウスの維持、in vitroにおける機能解析を実施する上での細胞培養培地、試薬および酵素、そして実験用プラスチック製品等に予算を使用する予定である。
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