研究課題
骨粗鬆症と高血圧症は、高齢者に生じる代表的な疾患であり、社会の高齢化に伴い、今後さらに増加が見込まれており、病態解明と治療法の開発は急務である。高血圧症を示す患者は骨量が減少しており、骨粗鬆症罹患のリスクが高くなることから、骨代謝と血圧調節機構との間には強い関連性があると考えられるが、その詳細な分子生物学的機構に関しては全く解明されていない。そこで本研究では、骨代謝と血圧調節機構のクロストークを解明する事を目的とし、検討を行った。本年度は、血圧調節に重要であると考えられている遺伝子を骨組織特異的に欠損させたコンディショナルノックアウトマウスを作成した。本マウスの骨から抽出したmRNAおよびタンパク質を用いて遺伝子の発現を確認したところ、mRNA、タンパク質レベル共に有意に発現量が低下している事が明らかとなった。次いで、組織学的ならびにマイクロCTを用いて骨の表現系を解析した。その結果、本マウスでは、野生型マウスと比較して、骨量が有意に減少していることが明らかとなり、これは骨形成の低下による可能性が考えられた。また、コンディショナルノックアウトマウスの骨では、野生型マウスと比較して、骨形成に関わる遺伝子のmRNA発現が低下していることも明らかとなった。さらに、マウスの大腿骨からmRNAを抽出し、マイクロアレイを用いてコンディショナルノックアウトマウスと野生型マウスとの間で発現の異なる遺伝子を網羅的に解析した結果、標的遺伝子と考えられるものを数十種類同定した。さらにこれらの遺伝子発現を、Real time PCR法を用いて確認し、コンディショナルノックアウトと野生型マウスの間で有意に変化する遺伝子を数種類同定した。
2: おおむね順調に進展している
コンディショナルノックアウトマウスの作製および解析および、in vitroの実験に関して、当初の計画通り概ね順調に進行していると考えられる。
1. 骨組織特異的遺伝子欠損マウスの解析:平成23年度から引き続きコンディショナルノックアウトマウスの解析を行う。2.トランスジェニックマウスの作製・解析 (in vivoの解析):トランスジェニックマウスを作成し、骨および血圧における表現型を解析する。さらにトランスジェニックマウスとコンディショナルノックマウスを交配して得られたマウスの骨および血圧における表現型を解析する。3. トランスジェニックマウスの解析 (in vitroの解析): 1で解析したトランスジェニックマウスおよびコンディショナルノックマウスと交配して得られたマウスから、骨芽細胞、破骨細胞そして血管内皮細胞を採取し、平成23年度に標的遺伝子として同定された遺伝子群の発現パターンの変化を検討する。
次年度は、コンディショナルノックアウトマウスの維持、トランスジェニックマウスの作成・維持、in vitroにおける機能解析を実施する上での細胞培養培地、試薬および酵素、そして実験用プラスチック製品等に予算を使用する予定である。
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