研究課題/領域番号 |
23659717
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋山 治彦 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60402830)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 廃用性骨萎縮 / 遺伝子改変マウス / マイクロアレイ |
研究概要 |
我が国の高齢化社会の到来によって様々な疾患による骨脆弱性を起因とした易骨折性とその後の運動能力の低下は社会的に大きな問題となっている。現在までに数種類の骨粗鬆症薬が開発されているが、骨量の回復は決して十分なものではなく、特に骨皮質の永続的回復に効果が期待できる薬剤はほとんどない。その理由の一つとして、骨細胞―骨芽細胞―破骨細胞による局所微小環境におけるメカニカルストレス-骨形成-骨吸収の分子メカニズムが解明されていないことがあげられる。本研究では、遺伝子改変マウスを用いて、生後、骨皮質に存在する骨細胞がメカニカルストレスに応答し、骨髄腔内の骨芽細胞および破骨細胞にシグナル伝達する分子メカニズムを解明し、骨粗鬆症および廃用性骨萎縮に対する組織再生医工学的および新規創薬の開発につなげることを目的とする。骨特異的I型コラーゲンプロモーターを用いて骨細胞および骨芽細胞にRed fluorescent protein遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製した。左坐骨神経を切除し後肢不動モデルを作製し、術後1週および3週で左大腿骨を摘出し、マイクロCTにて廃用性骨萎縮が発症していることを確認した。骨皮質のみの大腿骨は乳鉢で十分に粉砕し、トリプシンおよびコラゲナーゼで骨基質を十分に消化除去し、骨細胞を単離した。骨細胞は赤色蛍光で標識されており、単離された細胞をFACSにて骨細胞のみとする。不動化モデルの骨細胞およびsham手術の骨細胞それぞれよりmRNAを抽出し、Alligent社マウスGeneChipを用いて網羅的遺伝子解析を行い、それぞれの骨細胞における遺伝子発現プロファイルを作製した。現在、術後1週目および3週目において、不動化モデル骨細胞において3倍以上の遺伝子発現上昇または低下を認める分泌タンパク質のリストを作製し、病態に関与していると思われる遺伝子群を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨軟骨細胞を蛍光標識した遺伝子改変マウスを用いて骨軟骨の分子生物学的解析を遂行するため、近年、骨特異的I型コラーゲンプロモーターを用いて骨細胞および骨芽細胞にRed fluorescent protein遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを作製した(Col1a1-mRFP1 Tg)。この遺伝子改変マウスとFACS sortingを用いて骨細胞を単離することができる。10週齡の雄トランスジェニックマウスの左坐骨神経を切除し後肢不動モデルを作製する。対象はsham手術とする。術後1週および3週で左大腿骨を摘出し、マイクロCTにて廃用性骨萎縮が発症していることを確認した。次に、生理食塩水で骨髄腔を十分に洗浄し、Cワイヤーで骨髄組織を除去、骨皮質のみとする。骨皮質のみの大腿骨は乳鉢で十分に粉砕し、トリプシンおよびコラゲナーゼで骨基質を十分に消化除去し、骨細胞を単離する。骨細胞は赤色蛍光で標識されており、単離された細胞をFACSにて骨細胞のみとする。不動化モデルの骨細胞およびsham手術の骨細胞それぞれよりmRNAを抽出し、Alligent社マウスGeneChipを用いて網羅的遺伝子解析を行い、それぞれの骨細胞における遺伝子発現プロファイルを作製した。現在、術後1週目および3週目において、不動化モデル骨細胞で3倍以上の遺伝子発現上昇または低下を認める分泌タンパク質のリストを作製し、病態に関与していると思われる遺伝子群を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度で不動化マウスモデルの骨細胞で発現が低下している分泌タンパク質で、既に組み換えタンパク質が購入できるものに関しては購入し、市販されていないものに関しては大腸菌による発現システムを用いて作製する。6xHisタグを付加した分泌タンパク質遺伝子の発現ベクターを大腸菌に発現させ、IPTG誘導でタンパク質を発現させる。NiアフィニティーカラムでHisタグ付加組み換えタンパク質を精製し、濃度を100ug-1mg/mlに調整しておく。次に、Col1a1-mRFP1 TgとカテプシンK遺伝子座にgreen fluorescent protein遺伝子ノックインし破骨細胞を緑色蛍光で標識した遺伝子改変マウス (CaK-GFP KI; 現在作成中)を交配し、ダブルヘミマウスを作成する。このマウスは骨細胞/骨芽細胞が赤色蛍光を、破骨細胞が緑色蛍光で標識されている。このダブルヘミマウスの頭蓋骨骨膜下に組み換えタンパク質を注射投与する。二光子励起顕微鏡を用いてin vivoにおける骨芽細胞および破骨細胞の組み換えタンパク質投与部への細胞動態をライブイメージングし、骨芽細胞の細胞誘導および活性増強を有する分泌タンパク質を同定する。さらに、得られた結果を取りまとめて、成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究費は、遺伝子改変マウスの飼育管理料、組み換えタンパク質作製などの分子生物学的・生化学的手法のための一般消耗品購入費用に使用する予定である。
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