今年度実施した研究内容は以下のとおりである。 1)対象患者の選定 今年度は4名の方にご協力をいただいた。前年度の3名と合わせて、対象者は7名となった。 2)体細胞の採取とOPLL患者由来iPS細胞の作製 4名から皮膚組織を採取し、山中4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4及びc-Myc)をプラスミドベクターで導入する方法により、iPS細胞を作製した。得られた細胞は多分化能及び事故複製能を持つことを確認した。 3)靱帯細胞のマーカー遺伝子として知られるスクレラキシス遺伝子を、作成したiPS細胞にレトロウィルスを用いて導入した。 4)靱帯細胞への分化誘導 スクレラキシスを導入したiPS細胞に骨形成タンパク質の一つであるBMP-12を添加して培養することにより、I型コラーゲン、ラミニン、テノモジュリンの発現が増加し、すなわちiPS細胞が靭帯細胞への分化形質を持つことを確認した。 5)靱帯細胞の発現プロファイルの把握 OPLL患者から樹立誘導した靱帯前駆細胞3株と健常人由来iPS細胞から誘導した靱帯前駆細胞1株の遺伝子発現を、マイクロアレイにより比較した。この結果、OPLL患者由来靱帯細胞で共通して発現量が2倍以上異なる遺伝子を85種類選択した。現在、他の4検体においても発現の変化が共通しているかどうかを確認中である。本来の目的は発現量の異なるこれらの遺伝子群の全領域の塩基配列を次世代シークエンサーにより決定し、相違点を同定することにある。今年度は対象者の獲得と靭帯細胞への分化誘導法の樹立、発現プロファイルの把握に時間がかかり、塩基配列解析には至らなかった。今後引き続き計画を継続し、成果を得る予定である。
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