研究課題/領域番号 |
23659724
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40294459)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 骨肉腫 / Runx2蛋白 / アルギニンメチル化 |
研究概要 |
ヒト骨肉腫において、骨芽細胞分化に重要な役割を持つRunx2遺伝子のアルギニンメチル化の機能的意義、すなわち同修飾存在の有無と悪性度への関与を検討する。さらに、リン酸化とアルギニンメチル化修飾との相互関係を検討し、蛋白修飾部位をターゲットとした骨肉腫におけるオミックス解析技術を用いた新たな抗分子標的療法の開発をめざす。Runx2は骨分化において非常に有力な転写因子であり、同遺伝子発現が制限されたマウス(Runx2-KO mouse)ではアルザリンレッドによる石灰化の染色が著しく抑制されている。そして、Runx2の骨分化における主要な標的遺伝子であるオステオカルシンmRNAの発現は、Runx2の転写因子活性を知る上で重要な要素である。実際、上述のRunx2-KO mouseではオステオカルシンmRNAの発現は著しく抑制されている。本研究では、Runx2蛋白とPRMTsとの複合体形成を確認するため抗Runx2抗体を用いて免疫沈降を行い、Western Blot解析にてPRMTs蛋白群との結合を確認した。結果、骨肉腫細胞株SaOS2においてRunx2は複数のPRMTsと結合する事が確認できた。この結果は同じくPRMT4との結合が確認されているRunx1と同様であった。次にAsymmetricアルギニンメチル化特異的Runx1抗体を用いて、上記免疫沈降されたRunx2でもAsymmetricアルギニンメチル化を確認できた事から、Runx2にも同様のメチル化が存在し骨肉腫細胞株において何らかの機能を持つ事が示唆された。また、肺がん細胞株と骨肉腫細胞株でAsymmetricアルギニンメチル化特異的Runxの発現を確認した所、骨肉腫細胞株で多くのAsymmetricアルギニンメチル化Runx2を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Runx2蛋白とPRMTsとの複合体形成を確認するため抗Runx2抗体を用いて免疫沈降を行いWestern Blot解析にてPRMTs蛋白群との結合を確認している。結果、骨肉腫細胞株SaOS2においてRunx2は複数のPRMTsと結合する事が確認できた。さらに、Asymmetricアルギニンメチル化特異的Runx1抗体を用いて、Runx2のメチル化が存在し骨肉腫細胞株において何らかの機能を持つ事が示唆された。次に、肺がん細胞株と骨肉腫細胞株でAsymmetricアルギニンメチル化特異的Runxの発現を検討した所、骨肉腫細胞株で多くのAsymmetricアルギニンメチル化Runx2を確認できた。以上のことより、研究目的はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Runx2のオステオカルシンプロモーター上における転写活性能力について検討する予定である、これはアルギニンメチル化酵素でAsymmetricアルギニンメチル化をRunx2で起こすと考えられる、CARM1の強発現により抑制されている。この抑制能の確認のため抗 Runx2抗体と抗Asymmetricアルギニンメチル化特異的Runx抗体を用いてクロマチン免疫沈降を行い、オステオカルシンプロモータへの結合能をRealtime PCR法にて定量する。その後、それぞれのクロマチン免疫沈降余剰サンプルは、ChIP-Sequence解析へと用いる予定である。また、結合領域を厳密に決定する事により将来的な創薬へと繋げるため、引き続きRunx2とPRMTsとの結合領域を限定する研究を続ける。当科における骨肉腫検体でのAsymmetricアルギニンメチル化の発現をWestern Blot解析で確認すると共に、PRMTs酵素活性を制御する補助蛋白群の発現も見ていく予定である。その予算として、次年度予定助成金を消耗品の経費として利用する。また、PRMTs遺伝子発現抑制による骨肉腫細胞生命活動への影響を確認する為、細胞周期への影響、細胞増殖能への影響、アポトーシス等を見ていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品60%(次年度予定助成金を含む)、旅費30%、翻訳・校閲とその他投稿料・印刷費合わせて10%必要である。2年間の成果発表のため旅費が必要である。
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