研究課題/領域番号 |
23659727
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐藤 紀 徳島大学, 大学病院, 医員 (00448333)
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研究分担者 |
安井 夏生 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00157984)
東野 恒作 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80380129)
合田 有一郎 徳島大学, 大学病院, 医員 (70581148)
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キーワード | 細胞外マトリックス / コラーゲン / エラスチン / 質量解析 / 不溶性 |
研究概要 |
本研究の目的は、今まで不可能と言われていた結合組織マトリックスタンパクの質量解析を確立することである。腱と靭帯など結合組織のマトリックスは巨大分子の集合であるため、不溶性である。そのため、従来のタンパク解析方法では、組織が完全に可溶化されず、成分解析を十分に行うことが出来なかった。結合組織疾患の病態把握には、マトリックスタンパクそのものの解析を行う必要があると考え、本研究の着想を得た。 本研究では、化学物質や複数のタンパク分解酵素を段階的に用いることにより、ヒト組織の完全可溶化に成功し、さらに、質量解析の手法を用いて、可溶化したサンプル(断片化したペプチド)から親分子であるタンパク質の検出を行った。手術時に得られたヒトの腱(アキレス腱)・靭帯(黄色靭帯)を用いて、上記の方法を確立し、種々のコラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、接着性タンパク質の検出に成功した。日本において正常なヒトの組織の採取は非常に困難であったため、初年度はウサギの腱・靭帯の解析を行い、種々のコラーゲン類やエラスチン等を検出することに成功した。 当該年度は、腰部脊柱管狭窄症における肥厚した黄色靭帯の構成タンパクの同定および組織学的な検証を行った。硬膜側では多くが弾性線維から構成され、若年層に近い組織像であった。一方、背側では弾性線維が減少し膠原線維瘢痕様組織に置き換わっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今まで不可能と言われていた細胞外マトリックスが豊富な組織(腱・靭帯)の完全可溶化に成功し、質量解析の手法を用いて可溶化したサンプルからタンパク質の検出を行うことができた。また、腰部脊柱管狭窄症における肥厚した黄色靭帯の構成タンパクの同定も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、腰部脊柱管狭窄症における肥厚した黄色靭帯の構成タンパクの同定および組織学的な検証を行った。質量解析による構成タンパクの同定には成功したものの、定量化には課題が残ることが、当該年度の研究において分かった。次年度は、手術で得られた病的な腱・靭帯を用いて構成タンパクの定量化を行う方法を確立し、腰部脊柱管狭窄症における肥厚した黄色靭帯の構成タンパク(定量)を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
産前産後休暇及び育児休業の取得に伴い、前年度(平成24年度)の1年間研究を中断していた。研究再開時には、当初の計画どおり平成25年度で計画を終了する予定であったが、学内での電子顕微鏡利用ができなくなり、外注での検査に変更を余儀なくされたことに加え、電子顕微鏡検査時における条件(黄色靭帯への樹脂の浸透方法等)の検討に時間を要したため、研究に遅延を生じ、以降の計画に関わる研究について未使用額が生じた。 既に採取済みのヒトアキレス腱・黄色靭帯を用いて、構成タンパクの定量化を行うために必要な試薬(質量解析試薬、タンパク分解酵素、免疫染色試薬等)、実験器具、国内旅費(学会発表等)、質量解析装置使用料、論文作成のための翻訳・校閲のための費用を要す予定である。
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