研究概要 |
近年、自家骨移植の代替法の一つとして、組織工学的に再生させた骨の移植が注目されているが、酸素や栄養素が組織内で拡散できる範囲は100-200 μmと考えられており、血管が無い組織では中央部が壊死することが問題となっている。そこで組織内に血管を導入する試みがきわめて重要である。本研究では、RWV(Rotation Wall Vessel)バイオリアクターを用いた3次元培養法を用い、骨髄由来血管内皮細胞―間葉系幹細胞共培養系から、血管を備えた骨組織の再生を目指し、ウサギ骨髄細胞を用いた骨組織構築技術を初年度に確立した。 本年度はさらに、本組織をヌードラットに移植し、RWV回転培養により構築した血管を伴う組織の骨形成能を評価した。免疫不全ラット(F344/NJcl-rnu/rnu、8週齢、雄)の左右の大腿骨の内側に孔を開け左大腿骨に試験物質を埋植し、右大腿骨は埋植せず非移植群とした。大腿骨への埋植は,外側部から皮膚、筋肉を20-25mm切開し、直径0.5mmのドリル針で骨幹端部のほぼ中央部分に孔を開けた後に,φ約2mmのドリルで窩を作製して被験物質を埋植した。全生存例について、安楽死させ、左右の大腿骨を被験物質ごと採取した。最後に、凍結切片を作製し、各切片をToluidin blue, HE, Osteopontin, Osteocalcin, Arizalin Red Sで染色し、組織学的評価を行った。調製した組織を免疫不全ラットの骨欠損部位に移植することにより、組織の骨形成能を検討した。トルイジンブルー染色、ヘマトキシリン・エオジン染色像より、非移植群では移植後3週間では穴はほとんど埋まらなかったが、移植群では移植後3週間で穴が埋まり新生骨組織の再生を確認した。以上より、調製した組織を移植することにより、インビボで骨形成を促進させる効果があることを確認した。
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