研究概要 |
骨肉腫を始めとする骨軟部腫瘍の予後は、肺転移により最も大きく左右される。最近転移成立には腫瘍側の要因のみならず、宿主側の骨髄の役割が大きく注目されている。本研究では、まず骨肉腫の起源細胞と考えられる間葉系幹細胞の骨分化過程における、細胞運動様式、運動能の変化のメカニズムをマウスを用いて論文報告した(FEBS Lett, 2011)。一方我々が樹立報告したマウス骨肉腫高肺転移株LM8は、10E6-7個を同系マウスに皮下移植すると4-5 週目で肺転移にて全例死亡する。皮下移植にて全く肺転移を起こさない親株Dunnとの比較において下記の実験結果を論文報告した(CEM, 2013)。 1. 雄由来のLM8, Dunnを雌の同系C3Hマウスに移植後経時的に種々の臓器よりDNAを抽出し、Y染色体特異的遺伝子sry発現をPCRにて検討した結果、LM8では移植後3週目に肺で、4週目に血液で、Dunnでは4週目に肺と血液で検出されたが、共に骨髄内では検出されなかった。2. 血中の生細胞のみを培養する方法を用いて血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells, CTCs)数を検討すると、LM8群はDunn群に比べ、CTCsがより早期に、より頻度が高く、より数が多く検出できた。3. 培養血管内皮細胞上にLM8, Dunnを重層し腫瘍細胞が血管内皮細胞に浸潤するextravasation を模倣したtransendothelial migration assayのビデオ撮影を行い、LM8はDunnに比べ約2倍運動能が高かった。また単位時間当たりの血管内皮細胞の分裂回数を比較するとLM8がDunnに比べ約2倍多かった。 以上より、LM8、Dunn共に骨髄内へのhomingはなく、転移先である肺血管内皮細胞での浸潤能に大きな差があり肺への転移巣形成に大きく関与していることが示唆された。
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