研究課題/領域番号 |
23659735
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
上野 伸哉 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00312158)
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研究分担者 |
二階堂 義和 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50613478)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 麻酔薬作用 / 受容体trafficking / GABA-A受容体 / tonic GABA response |
研究概要 |
本年度の主要な成果として、麻酔薬ターゲットであるGABA-A受容体の膜移行(trafficking)障害が、麻酔作用の減弱を来すことを確認した。麻酔薬の主要なターゲットとしてはGABA-A受容体、グルタミン酸受容体、電位依存性イオンチャネルが知られている。その中で、GABA-A受容体の形質膜への移行に関わるタンパクであるPRIP-1を欠損するマウス(PRIP-1 KO)を用いて、麻酔薬の作用を正向反射を指標にして解析した。GABA受容体をターゲットとするpropofolによる正向反射出現の遅延および麻酔効果時間の短縮が観察された。一方グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体をターゲットとするケタミンにおいては、正向反射発現の遷延およびその作用時間減弱は見られなかった。正向反射は麻酔薬の催眠作用を反映していると考えられており、GABA-A受容体の膜輸送障害のある動物において、催眠作用の効果発現が減弱がみられた結果から、GABA-A受容体膜輸送が麻酔薬の睡眠作用発現に大きく関わることが示唆された。さらにGABA-A受容体サブタイプのなかでも、シナプス外にあるGABA-A受容体の機能が減弱していることを電気生理学的にも確認しており、膜輸送の細胞内での場所も効果発現に関与していることも明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜タンパクのtrafficking制御による麻酔薬の制御を仮説として研究計画調書に挙げた。さまざまな受容体が関与する可能性があったが、麻酔薬の主要な受容体ターゲットの一つであるGABA-A受容体が、trafficking異常により麻酔作用の変化を行動薬理的に証明でき、この概念の妥当性が示され、今後の研究の進展およびその方向性をしめすことができたのでおおむね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
GABA-A受容体の輸送タンパク欠損マウス(PRIP-1 KO)を用いて、麻酔薬の作用減弱を認めたので、以下の2項目に集中して推進させる。1)PRIP-1 KO動物を用いてGABA-A受容体traffickingが麻酔作用にどのようにかかわっているかを探索する。2)GABA-A受容体trafficking機構解明 1)GABA-A受容体分布には、シナプス直下と、シナプス外があり、特にこの動物においては、シナプス外に存在する受容体の異常を電気生理学的に確認した。この障害機構発現にシナプス外にあるGABA-A受容体のどのサブユニット関与しているかを、受容体サブユニット特異的なブロッカーを用いて薬理学的に明らかとする。また発現量の変化をmRNAおよびタンパクレベルにおいて解析し、関与するシナプス外GABA-A受容体サブユニットを確定する。一方、行動薬理学的アプローチとして、尾部への痛み反応への応答を指標に、Propofol、barubiturate, ケタミンの作用をPRIP-1 KOマウスと野生型と比較検討する。GABA-A受容体のtrafficking異常がどの麻酔作用の鎮痛作用にどのように関連を解析し、GABA-A受容体のtraffickingと麻酔薬作用発現と直接関与していかを明らかとする。 2)またGABA-A受容体のtrafficking機構解明のため、上記計画1)によるデータよりGABA-A受容体サブタイプ配列にSNAP-tagを導入し、強制発現系にトランスフェクションし、受容体移動可視化の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
最初の計画調書に基本的に従う形での使用を計画している。おもに消耗品費に8割以上支出を計画している。その内容は、KOマウスおよび野生型マウスの購入および飼育に必要な器具、 行動実験、スライスパッチ記録用の試薬、チューブ等実験器具類、 スライスパッチ実験に必要な、酸素・炭酸ガスを予定している。消耗品費以外では学会投稿料、論文校閲料を計画している。。
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