研究課題
GABA-A受容体の形質膜への移行およびリン酸化調節による受容体エンドサイトーシスにかかわるPRIP-1の欠損マウス(PRIP-1 KO)を用いてGABA-A受容体を介した伝達機構、薬理学的性質、痛みに対する応答、さらに麻酔薬の効果を比較検討した。その結果、麻酔効果が受容体輸送、分布に強く依存していることを明らかとし、麻酔作用の新たな調節機構開発の可能性を示した。1)PRIP-1 KOのフェノタイプ解析 PRIP-1 KOはシナプスを介したGABA抑制系および薬理学的特性は野生型(WT)と有意差はなかった。一方で、シナプス外のGABA-A受容体を介した神経抑制機構(tonic inhibition)障害を見出した。WTと比較して、PRIP-1 KOのtonic inhibitionはベンゾジアゼピン系薬物効果の減弱が見られた。さらに個体レベルの変異として、けいれん様の脳波異常、新規環境下での行動異常が観察され、神経伝達機構異常が示唆された(J Pharmacol Exp Ther 340; 520-8, 2012)。痛み応答に関して、PRIP-1 KOは機械刺激に対してWTより過敏性を示した(Mol Pain 7; 79,2011)。2)麻酔薬効果の評価 静脈麻酔薬の効果をWTと比較した。麻酔薬の作用は、催眠、鎮痛、有害反射の抑制、筋弛緩の要素があるが、まず催眠作用の効果を正向反射の消失を指標として評価した。PRI-1 KOにおいて、静脈麻酔薬propofol投与による正向反射の消失までの時間延長と、反射消失の持続時間の短縮が見られた。PRIP-1 KOはGABA-A受容体の膜移行、輸送の異常を持ち、さらにtonic を担う受容体分布が阻害されている。以上より、麻酔作用の効果調節に受容体輸送および動員機構を利用したアプローチが可能であると考え、この内容を論文作成中である。
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J Pharmacol Exp Ther
巻: 340(3) ページ: 520-528
DOI:10.1124/jpet.111.182386
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&dopt=Citation&list_uids=22128345
Neuropathology
巻: (Epub ahead of print)
DOI:10.1111/neup.12009
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