研究課題/領域番号 |
23659737
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
釈永 清志 富山大学, 大学病院, 准教授 (40187498)
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キーワード | 遠隔虚血プレコンディショニング / 虚血再灌流障害 / 深部静脈血栓症 / 人工膝関節置換術 / 駆血帯 |
研究概要 |
【目的】下肢虚血再灌流後の血栓形成に対する遠隔虚血プレコンディショニング ( remote ischemic preconditioning; RIPC ) の予防効果について明らかにするため、駆血帯を使用する人工膝関節置換術(TKA)の凝固活性動態について前向きに評価、検証した。 【対象及び方法】対象は駆血帯を使用する定時の片側TKA手術患者で、同意の得られた45例。RIPC施行の有無によりRIPC群(R群22例)とコントロール群(C群23例)に無作為に割り当てた。麻酔方法は両群とも共通(セボフルラン+レミフェンタニル)とした。R群では、麻酔導入後執刀前に観血的動脈圧ライン挿入側と反対側の上肢で、先行虚血再灌流(遠隔虚血プレコンディショニング:5分間虚血-5分間再灌流を4 サイクル)を施行した。なお、上肢虚血はマンシェットを用い観血的動脈圧ラインの収縮期圧より15 mmHg高く加圧した。採血ポイントは、T1: 麻酔導入直後、T2: 下肢の駆血帯解放直前、T3: 同解放20分後とした。測定項目は、可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)、D-Dimer、FDP、PLG活性とした。統計学的解析はTwo-way repeated measure ANOVAとHolm-Sidak 法を用い(Prism Version 6)、 p < 0.05を有意差ありと判定した。 【結果】SFMC値は両群ともT1に対してT3で有意に上昇した。T3のSFMC値はR群がC群より有意に低値を示した(R群6.8±0.8 μ g/mL vs. C群17.5±3.8 μ g/mL , p=0.012)。 【結語】C群では駆血帯解放20分後にSFMC値が有意に上昇し、血栓準備状態の進行が示唆される。RIPCは駆血帯を使用するTKA手術において、少なくとも術直後の血栓形成の予防効果がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は臨床研究であり、対象が特定の予定手術患者であった。病院手術部の改築改修工事により一時手術室(クリーンルーム)が使用できない時期があったり、予定していた整形外科手術の術者の海外渡航等の影響も有り、対象となる予定手術は想定していたよりも少なく、まだ目標症例数60例までに到達できていない。既に集まった45例で一区切りとして、測定終了できたマーカーについて解析した。遠隔虚血プレコンディショニングは駆血帯を使用するTKA手術において、駆血帯解放後20分のSFMC値がC群より有意に低値を示し、少なくとも術直後の血栓形成の予防効果があることが証明された。その成果は日本麻酔科学会第61回学術集会にて優秀演題として発表予定である。目標症例数に到達するまで、あと3~4ヶ月程かかると予想している。サイトカインやNFκB活性等のマーカーについては96穴プレートを使用することから、検体がある程度集まったところで効率的に測定する必要がある。したがって、これらのマーカーについては、どうしても測定及び解析が遅れてしまう結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
目標症例数まで、あと残り11症例となったこと、更に手術部の改修工事も終了したことから、後3~4ヶ月以内には目標症例数60例に到達できると予想している。 測定が遅れているサイトカインやNFκB活性等のマーカーについては、60例に届いたところで、集約的かつ効率的に生化学的測定を実施する。検体はすべて凍結保存中であり、実施可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は臨床研究であり、対象が特定の予定手術患者であった。病院手術部の改築改修工事により一時手術室(クリーンルーム)が使用できない時期があったり、予定していた整形外科手術の術者の海外渡航等の影響も有り、対象となる予定手術は想定していたよりも少なく、目標症例数60例までに到達できなかった。一部検体は集約的に測定をする必要があり、その測定費用は全ての検体が集まるまで担保しておく必要があった。目標症例数に到達するまで、あと3~4ヶ月程かかると予想している。 サイトカインやNFκB活性については96穴プレートを使用することから、検体がある程度集まったところで効率的に測定する必要がある。目標症例数に届いたところで、集約的に生化学的測定を行う予定であり、検体はすべて凍結保存中である。次年度使用額は、この生化学的マーカーの測定に要する費用が中心になる。
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