研究概要 |
【目的】適切な輸血・輸液量の判断には、十分な尿量と適切な比重、動脈血圧の安定、平均心拍数の安定などの定性的患者観察に加えて、心電図RR間隔の呼吸変動量(ΔRR)が指標とできないか検証する。 【方法】豚6匹(平均体重:25.2kg)を対象にイソフルラン2.5%にて麻酔導入後、動脈圧の脈波振幅呼吸変動量(ΔPP)およびパルスオキシメータ脈波振幅変動量(ΔPOP)、ΔRRを測定し、コントロール値とした。続いて、推定全血液量の10%(175ml)の輸液(サリンヘス:ヒドロキシエチルデンプン6%輸液剤)、20%(350ml)の脱血を3回繰り返し、循環血液量の変化の都度、循環動態安定のため20分経過後、ΔPP、ΔPOPおよびΔRRを測定し比較した。 【結果】コントロール時、初回の(10%輸液時、20%脱血時)、2回目の(10%輸液時、20%脱血時)、3回目の(10%輸液時、20%脱血時)において、ΔPPでは、それぞれ26.0、(15.8, 32.1)、(17.0, 43.1)、(23.4, 51.4)であった。また、ΔPOPにおいては、それぞれ65.0、(53.0, 68.2)、(58.2, 65.8)、(61.2, 73.2)であった。一方、ΔRRではそれぞれ1.49、(1.84, 1.70)、 (1.81, 1.64)、(1.70, 1.50)であった。 【結論】ΔPP, 一回拍出量変動量(SVV), ΔPOPは、コントロール時に比して、循環血液量減少、増加時にそれぞれ増加、減少することが判っているが、ΔRRはそれらとは逆にそれぞれ減少、増加した。つまり、循環血液量の減少、増加による変動量においては、ΔRRはΔPP、ΔPOP、SVVと逆相の変化を示すことが判明した。また、ΔRRの呼吸性変動量の変化はΔPP、ΔPOP、SVVの呼吸性変動量と同様に、適切な輸血・輸液量の判断が可能であると結論される。
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