1. 神経細胞の細胞内外で人為的に活性酸素を発生させた時に惹起される細胞傷害に対する新たに合成した物質の効果の検討 ラットの初代培養神経細胞を用いて、光増感剤であるフォトフリンを細胞内に取り込ませ、波長630 nmの赤色光を照射することで細胞内に一重項酸素を発生させ、神経細胞死の検出を試みた。その結果、一重項酸素誘導性傷害モデルにおける神経細胞活性の低下及び、その細胞活性低下が一重項酸素消去剤によって緩和されることをAlamar Blue法及び蛍光染色により確認した。また、その傷害時にオートファジーが起こっていることを走査型電子顕微鏡観察及び蛍光免疫染色により確認した。次に、グルタミン酸による神経細胞傷害モデルを構築し、同様に神経細胞死の検出を試みた。その結果、グルタミン酸傷害モデルにおける神経細胞活性の低下及び、その細胞活性低下が一重項酸素消去剤によって緩和されることを確認した。これは、先の一重項酸素誘導性傷害モデルで見られた細胞死形態と一致した。さらに、一重項酸素が発生していることを電子スピン共鳴法(ESR)により検出した。このことから、グルタミン酸による神経細胞傷害には一重項酸素が関与していることが示唆された。 2. 皮膚細胞の細胞内外で人為的に活性酸素を発生させた時に惹起される細胞傷害に対する新たに合成した物質の効果の検討 初代培養したヒト角化上皮細胞を用いて構築した放射線照射による細胞傷害モデルにおいて、DNA損傷の検出を試みた。その結果、damage-specific DNA binding protein 2 (DDB2) 及びその上流のp53の活性化が検出され、一重項酸素消去剤によりその発現及び活性化が抑制されることを確認した。また、ESRにより放射線照射後に産生された一重項酸素を検出した。このことから、放射線障害には一重項酸素が関与していることが示唆された。
|