研究課題/領域番号 |
23659744
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
魚川 礼子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50467651)
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研究分担者 |
植木 正明 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20213332)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 妊娠 / 脳神経発達 |
研究概要 |
平成23年度は妊娠中のマウスに対する2.9%イソフルランおよび4.4%セボフルランの1時間暴露が出産後の仔マウスの脳高次機能と脳組織構造に及ぼす影響の解析を行った。方法:イソフルラン暴露はC57BLマウスを妊娠10日、17日目に特製ボックスに飼育ゲージごといれて、麻酔ガスモニター下に酸素濃度50%でイソフルラン2.9%およびセボフルラン4.4%を1時間吸入させ、対照は50%酸素投与て行った。その後生後8週間目に、仔マウスで8方向迷路による空間認知記憶学習とヘマトキシン・エオジン染色およびシナプトフィジン免疫染色で脳組織学的検討を行った。結果:妊娠17日目に1時間の2.9%イソフルランで暴露され、出産した雄の仔マウスの空間認知学習機能は低下し、シナプトフィジン免疫染色性が大脳皮質および海馬で低下していた。しかし、4.4%セボフルラン曝露後には影響を与えなかった。また妊娠10日目の2.9%イソフルラン、4.4%セボフルラン曝露後には迷路学習およびシナプトフィジン免疫染色性に変化を与えなかった。考察:この結果から、妊娠中の子宮内での仔の脳神経発達が最高になる妊娠後期での吸入麻酔薬のうちイソフルランの高濃度2MAC曝露のみが出生後の仔の脳神経発達に影響を与えることを初めて証明した。このことは現在行われている妊娠中の胎児麻酔や非妊娠手術での麻酔方法の再検討が必要であることを示している。次年度は、妊娠中の吸入麻酔薬の暴露による脳神経発達障害の原因を脳神経成長促進因子の面、その原因を未熟脳から発達脳へのスイッチに及ぼす影響から検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一時、妊娠マウスが麻酔薬曝露後に育児放棄した親マウスがいたが、予定の実験は行えた。
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今後の研究の推進方策 |
妊娠中の高濃度麻酔薬曝露では妊娠17日目のイソフルラン曝露が影響を与えているが、セボフルランでは影響は認めなった。また低濃度吸入麻酔薬での麻酔薬曝露時期と濃度による影響を検討する必要がある。さらに妊娠中のほかの静脈麻酔薬も含めた安全に使用できる麻酔薬の検索が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は(1)2MACの高濃度吸入麻酔薬による胎児麻酔後、生後1週間、2週間、3週間目の海馬での脳由来神経栄養因子(BDNF)に及ぼす影響を検討する。 妊娠中期(妊娠10日目)及び後期(妊娠17日目)に2MACのイソフルランおよびセボフルラン暴露群、対照群として、50%酸素暴露群に分ける。生後1週間後、2週間後、3週間後に海馬を取り出す。それぞれのサンプルを処理し、RNAを抽出、BDNFmRNAのRT-PCRを行い、比較検討する。(2) 高濃度吸入麻酔薬による胎児麻酔後の、未熟脳から成熟脳へスイッチに及ぼす影響を、吸入麻酔薬の作用起点である、GABA受容体の未熟脳から成熟脳へのスイッチに関係する因子への影響から検討する。 妊娠中期(妊娠10日目)及び後期(妊娠17日目)に2MACのイソフルランおよびセボフルラン暴露群、対照群として、50%酸素暴露群に分ける。生後1週間後、2週間後、3週間後に海馬を取り出し、NKCC1およびKCC2mRNAのRT-PCRを行い、未熟脳のNKCC1から成熟期の脳に発現しているKCC2の発現機能へのスイッチに影響があるかどうかを検討する。
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