臓器虚血再灌流障害の克服の一手段として短時間虚血および薬理学的処置による内在性臓器保護機構を利用した臓器保護法の臨床応用が試みられている。一方、ある種の病態(加齢、高血糖状態、脂質代謝異常、肥満)において虚血再灌流障害に対する内在性臓器保護機構が障害されることが示されており、臨床応用が制限される一因となっている。各病態の動物実験モデルを用い、各種病態に影響されない心筋保護法の開発を行いまたその阻害因子の分子機序解明を行うことで、虚血性心疾患患者の多様な病態に対して有効な薬理学的臓器保護戦略の確立を研究の目的とする。 今回、ラット心筋虚血再灌流モデルを用いて、急性高血糖下における薬理学的ポストコンディショニングについて研究を行った。levosimendanによるポストコンディショニングでは高血糖下においても心筋梗塞範囲の変化を認めず、levosimendanによる心筋保護効果は高血糖によって抑制されないことを明らかにした。またmilrinoneとfasudilは高血糖により閾値が上昇し作用が減弱するものの、量を増やすことで再び心筋保護効果が得られることも明らかにした。加えてミトコンドリア感受性カリウムチャンネル(mKATP channel)開口薬であるdiazoxideやmKATP channel阻害薬である5-hydroxydecanoic acidを用いることで、高血糖下での心筋保護効果減弱の分子細胞機構としてミトコンドリア感受性カリウムチャンネルが関与する可能性が示唆された。
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