研究課題/領域番号 |
23659755
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 洋祐 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00542094)
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研究分担者 |
小川 修 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90260611)
井上 貴博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80511881)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 癌微小環境 / 去勢抵抗性 |
研究概要 |
臨床的前立腺癌の表現型を保ったマウスxenograftモデルであるKUCaP-2の去勢治療感受性期から抵抗性期に変化する遺伝子群の網羅的解析の結果(Cancer Res 2010)、細胞膜蛋白質のsheddingに関係するNardilysin(NRDc)が去勢治療感受性期に比較し、去勢抵抗性期に発現上昇していることを見出した。NRDcは細胞膜蛋白質の細胞外ドメインの切断、"shedding"に関与して癌微小環境の変化に影響を及ぼすと考えている。まず当研究室で蓄積した前立腺癌患者の血清を用いてNRDc値を測定すると、去勢抵抗癌患者においてその値が有意に高かった。また前立腺癌組織マイクロアレイでのNRDcの発現を免疫染色で確認すると、癌細胞の悪性度が高く、また臨床的にPSA再発の傾向が高い組織で、強く染色される傾向が見られた。次に前立腺癌細胞株でのNRDcの発現を確認し、発現の高いPC3でNRDcをknockdownし、低いLNCaPにNRDcを強制発現させることで表現型の変化をみた。NRDcをknockdownしたPC3はcontrolに比べて細胞増殖が遅く、マウスに移植しても増殖速度が抑制されていた。NRDcを強制発現したLNCaPでは増殖には変化が見られなかったもののアンドロゲン依存性androgen receptor regulated geneに変化が見られた。これらの結果よりNRDcは前立腺癌において細胞増殖、去勢抵抗性、臨床的悪性度に関わっていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroとin vivoでの結果が同じ方向を向いており、当初の仮説とも合致する結果が得られている。ただ機能解析に関する実験がまだ進んでおらず、特にandrogen receptorとの関連についてもう少し進んでいる予定であったため。
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今後の研究の推進方策 |
androgen receptorの発現やその下流の遺伝子とNRDcとの関連をin vitroで進める。具体的にはアンドロゲン非依存性を獲得したLNCaPを用いて、その細胞増殖や細胞周期との関連をみる。また当研究室の別のマウスxenograftであるKUCaP3もアンドロゲン依存性、androgen receptorの発現などの特徴をもつが、嚢胞を形成しその嚢胞液中のPSAが極めて高いというユニークなモデルであり、なおかつ去勢抵抗性も獲得しうることから、その嚢胞液中のNRDc値の変化を見たり、またその嚢胞内にNRDcを発現誘導しうるlentivirusを注入することで表現型の変化をみることも予定している。それによる嚢胞液内の様々な成長因子やサイトカインの変化を測定し、大きく変化を認めた分子の局在を免疫染色法にて検索し、同分子の前立腺癌細胞への生物学的な影響を培養細胞系で解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
xenograft移植用の免疫不全マウス、その繁殖、飼育管理および上記実験にて見つかった分子の機能解析を進めていくのに必要となる試薬などの購入など。またこれまでの結果を各種学会で公表する予定であり、その雑費等。
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