研究課題
着床・妊娠にかかわる胚の制御機構を制御する分子の同定を試みるため、前核期の受精卵および8細胞期胚を同一受容雌の左右の卵管に移植して人為的にimplantation windowを早期に開放させ、継時的に採取した卵管および子宮組織における遺伝子発現をマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。その結果、28,815アレイに対する発現が確認された。自然交配において発現量が5倍以上変化していた遺伝子は、208遺伝子であった。implantation windowが開き始めると考えられる3.5 dpc (交配後の日数)において発現が亢進する遺伝子を同定するために2.5 dpcから3.5 dpcの間で発現が上昇し、3.5 dpcから4.5dpcの間で発現が減少、そして4.5 dpcから5.5 dpcにかけて減少していた遺伝子を検索したところ31遺伝子が検出された。また、3.5 dpcにおいて発現が減少する遺伝子を同定するため、2.5 dpcから3.5 dpcの間に発現が減少し、3.5 dpcから4.5 dpcおよび4.5 dpcから5.5 dpcにかけて、それぞれ、発現が上昇していた遺伝子を検索したところ8遺伝子が検出された。同様に、前核期の受精卵を移植した3.5 dpcで自然交配の2.5 dpcと比較して上昇する遺伝子は13遺伝子、減少は25遺伝子であった。また、8細胞期胚を移植した2.5 dpcで自然交配の2.5 dpcと比較して上昇したのは17遺伝子、減少したのは13遺伝子であった。 これら検出された遺伝子で、実験区にかかわらずimplantation windowの開放時に発現が上昇した遺伝子は2個、および発現が減少した遺伝子は1個であった。これらの遺伝子あるいはこれらの上流にある遺伝子は、implantation windowのトリガーとなる可能性があると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
再現性の確保を目的として、レーザーマイクロダイセクションによる子宮内膜組織を摘出する方法を採用したために、思いがけず、手技の習得および適当量の材料採取を終了するまでに時間を要した。しかし、同定に成功した3種類の遺伝子については、リアルタイム定量PCRの準備が整ったため、概ね順調と自己評価した。
研究計画に沿って、妊娠および偽妊娠マウスにおける着床関連遺伝子のmRNA発現解析、発現の局在、当該遺伝子の発現の人為的抑制あるいは亢進による効果・影響を検討し、implantation window制御因子の同定に迫る予定である。
次年度の研究費は、発現解析のための消耗品費として、その大部分を費やす予定である。
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