研究課題/領域番号 |
23659768
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有馬 隆博 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80253532)
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研究分担者 |
樋浦 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70451523)
岡江 寛明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10582695)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 胎盤発生 / TS細胞 / Cdx2 / Oct3/4 |
研究概要 |
動物の種により胎盤組織構築は多様性を有するが、その機能、発生機序は共通である。すなわち、胎盤は母体と胎児間で栄養交換を司る器官であり、受精後、胚盤胞では、胚体細胞系列(内部細胞塊 : ICM)と胚体外細胞系列(栄養外胚葉 : TE)に最初の分化(細胞運命決定)が起こる。両者は、同じゲノム配列を持つにも関わらず、全く異なる細胞系譜を辿る。胎盤組織へと分化する胚体外組織(TE)は、胚盤胞期にCdx2の発現亢進とOct3/4の発現低下により、胚体組織より分化し、細胞運命が決定する。胎盤幹(TS)細胞は、胚体外細胞系列から樹立した未分化細胞で、容易に胎盤構成細胞への分化が可能な細胞である。本研究では、TS細胞を用い、Cdx2遺伝子のエピジェネティックな分子機構と分子間相互作用について解析する事を目的とした。均一な細胞集団で未分化なTS細胞を用いて、Cdx2遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化とヒストン修飾について解析を行なった。DNAメチル化の解析は Bisulphite-PCR法を用いて解析し、PCR領域内の全てのメチル化部位について解析した。その結果、Cdx2遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化を解析したところ、低メチル化状態でヒストン修飾も活性型で有為な変化を認めた。反対に胎児性幹細胞(ES)では、高メチル化状態とヒストンの不活化を維持していた。この結果はメチル化阻害剤やヒストン阻害剤を添加して、再確認した。この結果より、ES とTSの分化過程には、Cdx2遺伝子のエピジェネティックな分子機構が作用する事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の如く、平成23年度の研究実施計画であるin vitroにおける「胚体外細胞系列分化へのCdx2遺伝子の分子機構の解明」はほぼ予定通り終了した。
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今後の研究の推進方策 |
一過性および永続性に、遺伝子発現を抑制するCdx2 遺伝子のノックダウンTS細胞とOct3/4遺伝子強制発現TS細胞株を樹立し、「TS細胞におけるCdx2遺伝子の機能解析と分子間相互作用」を明らかにしていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
TS細胞におけるOct3/4遺伝子とCdx2遺伝子の分子間相互作用:(1)Oct3/4強制発現用ベクターの作製とTS細胞への遺伝子導入:Oct3/4遺伝子cDNAをRT-PCRで合成し、強制発現用ベクター(pcDNA)にクローニング。Electropolation法を用い、TS細胞株にトランスフェクションし、強制発現細胞株を樹立。Oct3/4蛋白の発現はウェスタンブロッティングによって確認。(2)Oct3/4強制発現TS細胞株の細胞特性:Oct3/4強制発現TS細胞株の細胞形態変化とコロニー形成能の解析。また、TS特異的未分化遺伝子マーカー(Eomes, Id2, ErrB)の発現量を解析。(3)Cdx2遺伝子の発現およびエピゲノム解析:複数のOct3/4強制発現TS細胞株を用い、Cdx2遺伝子の発現およびエピゲノム解析、DNAメチル化とヒストン修飾を行なう。また、このTS細胞株は分化誘導し、細胞形態、巨細胞の出現の有無とTS特異的分化遺伝子マーカー(4311,mash2,Pl-1)の発現量の比較を行なう。(1)ヒト未分化胎盤絨毛細胞へヒトCDX2遺伝子の導入:これまでの研究成果より、FACSを用い、ヒト未分化胎盤絨毛細胞(SP細胞)の分離に成功。至適培養条件を確立するため、ヒトCDX2遺伝子を遺伝子導入。これまでの予備実験より、このSP細胞は、遺伝子導入効率は極端に悪く、細胞数も少ないため、胚体外細胞系列に特異的に遺伝子導入可能なレンチウイルスベクターを用いる(2)ヒトTS細胞樹立の確認:ヒトTS細胞株でGATA2,CBFBの発現がみられ、TAL1, Klk-1の発現がないことにより、組織特異性に関しても確認。染色体異常についてはG-band法にて解析。また胎盤ホルモン(ヒト胎盤性ゴナドトロピン、ラクトーゲン)の産生をELISA法にて測定。
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